2014 Fiscal Year Research-status Report
白血病細胞耐性機構のリバースグライコミクス的解明と抗癌剤耐性診断法の開発
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26505008
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中の 三弥子 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (40397724)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖分析 / 白血病 / 薬剤耐性 / グライコミクス / 診断法 |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病細胞などの癌細胞も含めて真核細胞の表面はタンパク質や脂質から伸びた糖鎖で覆われています。その糖鎖は、受精、分化、癌化や免疫など生命現象に直結した多くの機能に関与していることがわかってきています。糖鎖は遺伝子から出来た様々な種類の糖転移酵素と糖分解酵素が協奏的に働くことにより様々な種類の構造が生成します。疾患により生体内状況が変化すると、これらの酵素群の協奏的作業が変化し糖鎖構造が変わります。そのため疾患を知るには、遺伝子側からではなく、その結果産物である糖鎖側から、つまりリバースグライコミクス的に研究を進めていく方が良いと考え、この1年間、白血病細胞株を用いて抗癌剤耐性獲得と糖鎖構造の変化の因果関係を調べました。 この研究を始めるまでにわかっていたことは、急性リンパ性白血病細胞株(CEM細胞)が微小管安定化薬(抗癌剤)デオキシエポチロンBに対して耐性を獲得すると、CEM細胞膜上糖タンパク質の糖鎖の構造が変化することでした。その変化とは、膜上の全ての糖タンパク質におけるα2-6シアル酸を持った糖鎖の減少でした。 それらの結果より、本研究の1年目では、白血病細胞株を用いて、α2-6シアル酸を持った糖鎖の減少の機序解明を行いました。本年度(2年目)には、白血病患者由来の白血病細胞において同じ変化が起きているかを調べる予定でしたが、白血病患者からの白血病細胞の提供が困難であるため、急性リンパ性白血病以外(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)の細胞株においても、同じ糖鎖変化が起きるかを調べることにしました。次年度(3年目)には、4種の白血病細胞株で変化していた糖鎖構造を認識できる分子(レクチンや糖ペプチド抗体など)を用いて簡便な抗癌剤耐性獲得診断のための測定法を開発する予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度で汎用性の高い白血病の抗癌剤耐性獲得診断法の開発を目的とするので、1年目では、最も白血病で用いられている微小管作用抗癌剤(デオキシエポチロンB、ビンクリスチン、パクリタキセル)の耐性獲得と糖鎖構造変化を、急性リンパ性白血病細胞株(CEM細胞)で調べました。初めに、デオキシエポチロンBについて、糖鎖変化する機序を調べました。当初の予定通り、リバースグライコミクス的に、様々な糖転移酵素(ST6Gal1, ST3Gal3, ST3Gal4など)と糖分解酵素(シアリダーゼNeu1~Neu4など)およびABCトランスポーター(薬剤排出ポンプ、P-糖タンパク質)のmRNAおよびタンパク質の発現量を測定しました。その結果ある1つの糖転移酵素の減少のみが観察されました。当初は、耐性細胞株の微小管に変異が入っていないかを解析する予定でしたが、変化していた糖転移酵素の遺伝子をCEM細胞およびCEM耐性細胞に導入またはノックダウンすることで、耐性獲得との因果を調べることが出来ました。また、当初の計画通り、モデル細胞株として、α2-6シアル酸を発現していないチャイニーズハムスター卵巣細胞を用い、耐性獲得との因果関係を明らかにしました。 当初の計画では、CEM細胞で3種の抗癌剤(デオキシエポチロンB、ビンクリスチン、パクリタキセル)の耐性獲得の因果関係を見る予定でしたが、ビンクリスチン、パクリタキセルの耐性獲得による糖鎖変化は発見しましたが、それ以降の因果関係は、デオキシエポチロンBしか解明できませんでした。しかし、当初の計画以上に行えたことは、このデオキシエポチロンBによる耐性の原因は、細胞表面のα2-6シアル酸の減少によるもので、そのために抗癌剤の取込/排出がおかしくなっていることを突き止めました。よって、当初の計画通り進展していると思います。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、本年度(2年目)は、細胞株でなく実際の患者血液中の白血病細胞を使った場合の糖鎖の変化を調べることになっていましたが、白血病患者から白血病細胞を頂くことが困難になったため、急性リンパ性白血病以外の細胞株においても、同じ糖鎖変化起きるかを調べることに変更しました。4種の白血病細胞株(急性リンパ性白血病細胞株、慢性リンパ性白血病細胞株、急性骨髄性白血病細胞株、慢性骨髄性白血病株、)において、3種の微小管作用抗癌剤(デオキシエポチロンB、ビンクリスチン、パクリタキセル)による耐性獲得と糖鎖構造変化、およびその変化した因果関係、さらにその原因を調べていく予定です。最終的には、白血病患者血液中の白血病細胞においても耐性獲得による糖鎖構造変化を調べたいので、今年度は、少量の細胞数で糖鎖構造は解析できる分析方法も確立していく予定です。具体的には、糖鎖試料の調製法と、質量分析装置とその分析条件の検討です。次年度(3年目)では、細胞株と実際の白血病患者細胞の両方の結果を基に、変化していた糖鎖構造を認識できる分子(レクチンや糖ペプチド抗体など)を用いて簡便な抗癌剤耐性獲得診断のための測定法を開発する予定です。
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Causes of Carryover |
392円は、当研究を行うために必要な物品を買うのには、小額すぎるため残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(27年度)に購入する物品の抗体・レクチン、酵素抗体反応試薬、機器分析用消耗品、化学・分子生物学試薬の一部として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)