2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26506006
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
若山 清香 山梨大学, 総合研究部, 助教 (10525918)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙繁殖生物学 / 発生工学 / 受精卵凍結 / 培養容器の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験では、マウス2細胞期胚を地上で凍結し、ISSで解凍後に4日間培養して微小重力環境下で胚が発生できるのか明らかにすることを目的としている。2015年度では主に、JAXA並びに千代田化工建設さんに協力してもらい、宇宙ステーション内のCO2インキュベータ内で胚の培養が可能でかつ、ステーション内の顕微鏡で観察可能なデバイスの開発を行った。デバイスは約3cm×5cm、暑さ6mm程度の薄型の容器で、細胞培養用のシャーレと同じ素材で作成した。真中にひし形の培地エリアを設け、下から顕微鏡で観察できるように透明な板、上からはそのままインキュベータ内で培養可能な透過膜フィルムを張り、培地エリアへは培地交換機械による流路のための細いスリットを設けた。本デバイスを用い、はじめに容器自体の素材の毒性を調べるため、2細胞期受精卵の発生の観察並びに受精胚の仮腹母への移植実験を行った。容器の培地エリアに胚培養用培地を満たし培養並びに移植を行った実験では正常な胚発生が見られた。しかし実際にはデバイス内培養エリアで中空糸内に閉じ込めた胚の解凍培養を行うのが最終目的となる。ステーション上で簡単に観察対象受精卵が顕微鏡で見つけられ、かつ経時的に観察を可能とするため、シリコンゴムで中空糸の端を挟み込み、容器自体に固定する必要がある。容器内に小さなシリコンシートの片側を接着させ、シリコンシートの弾力を用い中空糸を挟み込む構造で試作品を作成した。また、その際に用いるシリコン片は容器接着部分のシール材とは比較にならない量となるため、シリコン材の受精卵における素材毒性についても実験を行った。 本研究費の実験内容について 2015年9月18-20日に行われた第108回繁殖生物学会において、公開市民講座の演者として「宇宙における動物繁殖の可能性」として本内容の計画を含む実験について招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在初期胚培養用のデバイスを開発中である。デバイスを作成するにあたり使用するデバイス自体の素材の毒性試験並びに接着材となるシリコンの毒性試験を行った。デバイスの素材は細胞培養用のシャーレと同じ素材となっており、その中でin vivoで受精させた2細胞期受精胚を培養し、発生を観察したところ、ほぼすべて胚盤胞期にまで正常に発生が進み、胚移植にて通常受精胚移植と同等の産子率(60%以上)であった。一方、接着剤となるシリコン材の毒性試験では、第1回試作品に使用したシリコン型番“3140”を用いて実験を行った。35mmディッシュにシリコンを塗布し、卵子培養用培地を3ml入れ受精卵の発生を観察したところ90%以上の胚が正常に胚盤胞期まで発生した。しかし、正常に発生したにも関わらず胚移植による産子率が0であったため、違う種類のシリコン2種でさらに同じ実験を行った。すると同じ“シリコン”という素材でも種類により産子率にブレが出ることが分かり、デバイスの素材や接着剤の毒性が受精卵発生に大きく関わることが明らかとなった。ISS内で使用可能な解凍受精卵の正常な発生を見るためのデバイスは必須条件となるため、現在さらに新しい試作品を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の試作品の実験結果をふまえ、受精胚に影響がないと思われる素材のみを使用し、新たに試作品を作成している。新しい試作品での受精胚培養検討実験と同時に宇宙空間で受精卵解凍が簡便に行える新たな方法を試みたい。宇宙空間で使用できる最低温度の冷凍庫は-95℃であることが分かっている。今までに確立されている凍結受精卵の保存は液体窒素(-196℃)であり、より高い温度帯(-150℃)では受精卵の保存は10日と持たないことが報告されている。これは凍結の際に卵子細胞質内に形成される氷の粒が超低温ではガラス化されDNAに損傷を与えづらくなるためである。しかし、数十度温度が上がるとガラス化が解凍し、氷の粒が形成され細胞質並びに核にダメージを与えるからである。ISS内で使用できる低温冷凍庫の最低温度が-95℃である以上、どうしても新たな受精卵凍結法を開発しなければならない。現在までにガラス化法と呼ばれる受精卵凍結法では-95℃の冷凍庫に凍結胚を移すと胚が全滅することを確認している。ガラス化法では高温度帯での卵子保存は現実的ではないため、緩慢法という段階的に温度帯を低くする凍結法を用いることにする。現在のところ緩慢法で凍結受精卵保存は液体窒素中であることが定法であるが、我々は新たに凍結保護溶液を開発し、高い温度帯でも受精卵の長期保存が可能になるよう実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度はデバイスの開発に力を注ぎ、実際のウェットの実験(マウス受精卵実験)はそこまで多く行わず、消耗品費がすくなかった。そのため次年度繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は新たな受精卵凍結法を開発するために多くの培地を検討する必要がある。さらに緩慢凍結の機械が必要となり、購入は難しいにしても有償レンタルでプログラムフリーザーをレンタルする予定である。そのため前年に繰り越した金額分および2016年度予算合計のすべてを使用する予定である。
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Research Products
(4 results)