2014 Fiscal Year Research-status Report
根と胚軸における正と負の重力屈性を決定付ける遺伝子発現制御機構の解明
Project/Area Number |
26506016
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
筧 雄介 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (50636727)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トランスクリプトーム / オーキシン / 重力 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
オーキシン応答性遺伝子発現をAffimetrix社の最新のマイクロアレイチップArabidopsis gene 1.1 STを用いて処理時間ごとに網羅的に調べなおした。このデータを含めたシロイヌナズナの遺伝子発現解析データベースAtCASTを発表した(Kakei, Y. & Shimada, Y. AtCAST3.0 Update: A Web-Based Tool for Analysis of Transcriptome Data by Searching Similarities in Gene Expression Profiles. Plant Cell Physiol 56, e7–e7 (2015).)。AtCASTは任意のDNAマイクロアレイ実験に類似した実験結果を既存データの中から検索する機能を持つデータ解析ツールである。遺伝子発現変化の傾向を特徴付ける遺伝子群を自動的に抽出、マイクロアレイ実験の発現プロファイル間の類似性を計算し、有方向性ネットワークで表示する。AtCASTを用いることで変異体の原因遺伝子によって引き起こされる遺伝子発現変動が何の影響と類似し、どのような特徴があるかを解析できる。このAtCASTを用いてオーキシン処理と反対の遺伝子発現応答を引き起こす既知の実験条件を抽出することができた。オーキシン関連変異体nph4-1, slr-1, iaa17-6, arf19-1, arf2-6, sav3-2はオーキシン作用と負の相関を示し同一のクラスターに含まれる。このクラスターに含まれる実験で共通して発現が変動した遺伝子はオーキシン濃度低下で引き起こされる分子機構に関わっていると推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーキシン合成の最終ステップを担う酵素YUCCAを阻害する新型のオーキシンの合成阻害剤PPBoを開発した。PPBoが引き起こす遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。これまでに得られているオーキシン合成酵素TAA1の阻害剤AOPP、Kynurenineやオーキシンシグナルの阻害剤PEO-IAAの処理によって引き起こされる遺伝子発現変化と共通の発現変化を抽出することにより、オーキシン濃度低下やオーキシンシグナル伝達がブロックされたことによりオーキシン作用が低下している状況下で発現が制御されていると考えられる遺伝子群を得ることができた。これらの阻害剤で共通で遺伝子発現が変動していたXTH12などいくつかの遺伝子について上流1000bpプロモーター配列を単離し、ルシフェラーゼと組み合わせたレポーターシステムを遺伝子組換え用のベクターに組み込んだ。オーキシン濃度低下を反映するマーカーとして使用する。FRETを用いたオーキシンバイオマーカーの配列を含むプラスミドのコンストラクションは1種類について終了した。FRETを用いたオーキシンバイオマーカーの作成はやや遅れているが、これまで知られいるものとは違ったオーキシン応答を示す遺伝子のプロモーターをマーカーシステムに組み込むことができたので、応答メカニズムの解明は計画以上に進んでいる。全体で評価するとおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでに作成したプロモーターレポーターのうちシロイヌナズナでオーキシン濃度変化とレポーターの発現の相関が見やすいものがあるかどうかテストする予定である。また、FRETを用いたオーキシンバイオマーカーについては、残りのコンストラクションを進めると同時に大腸菌やシロイヌナズナで発現させ、オーキシン濃度に応じたFRET効果が見られるかどうかテストする予定である。その後、これらの新しいオーキシンバイオマーカーと既存のオーキシンマーカーを用いてオーキシン濃度の上昇及び低下が起こっている細胞層を特定する予定である。これらのシステムをもしいてオーキシン濃度変化とオーキシン応答に細胞ごとにどのような違いがあるかの研究を進める。
|
Causes of Carryover |
26年度研究計画にあった「繰り返しを多く含む合成DNA」の外部からの調達が年度を跨いだため。繰り返しを多く含むDNAの合成は困難であることが計画段階から予想されており、この合成DNAを用いない代替の手段での研究推進が計画されているので研究計画全体に支障はない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
該当する合成DNAは27年度に調達する。
|