2014 Fiscal Year Research-status Report
脳神経回路維持の基盤となる睡眠依存性のシナプス可塑性
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26507001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辛島 彰洋 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40374988)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 大脳皮質 / 睡眠 / 覚醒 / 断眠 / ホメオスタシス / AMPA受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目である平成26年度は、多くの研究者が考えているがまだ実証されていない「睡眠-覚醒状態依存的にシナプス結合が変化すること」を確認する実験を行った。実験では、シナプス長期増強時に挿入されるCa透過型AMPA受容体がシナプスに存在しているかどうかを調べるin vitro実験を行った。睡眠の効果を調べるために、睡眠をとっている動物(睡眠群)と睡眠をとらなかった動物(覚醒群)において脳標本を作製し比較を行った。その結果、覚醒群のスライス標本のシナプス部にはCa透過型AMPA受容体が存在するが、睡眠群では存在しないことを示唆する結果が得られた。Ca透過型AMPA受容体はシナプス長期増強が誘導された直後にのみ存在することから、以上の結果は、睡眠時には覚醒時とは異なりシナプス結合が増強されていないことを示唆している。 この実験では以下に記すような方法で断眠を行った。(i) 動物を常に動画撮影して、動物が動いているかどうかを調べることで睡眠状態か覚醒状態かを判定する。(ii) 動物に体動が見られない時(つまり睡眠の可能性があるとき)には実験者がケージを動かすなどして覚醒を促す。脳波を測れば睡眠状態かどうかを正確に判定できるが、(i)に記したように体動だけでは、体動がない安静覚醒状態と睡眠状態を区別できず正確に睡眠状態を抽出できない。また、(ii)の方法は、断眠を行っている間は実験者が常に動物ケージの傍に待機しなければならず、実験者への負担が大きく非効率である。我々はこの2つの問題を解決するために自動断眠装置を作成した。この装置は、記録した脳波をリアルタイムで解析して睡眠-覚醒状態を判定し、睡眠状態と判定された場合はケージを自動で揺らすというものである。この装置を使った予備実験により、90%以上の正確さで断眠できることを確認した。今後はこの装置を利用して実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ca透過型AMPA受容体の有無を調べるin vitro実験では、統計検定ができる程度の十分な数のデータを得ることができた。また、これまでより効率的に実験動物を断眠させられる自動断眠装置を開発することもできた。この装置を利用すれば今後はより効率的に実験をすすめられるはずである。以上のことから、平成26年度はおおむね順調に進めることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に開発した自動断眠装置を利用することでこれまでより効率的に実験を進めていきたい。さらに今後は、以下の課題に取り組みたい。(i) 覚醒時にはシナプス結合が増強する一方睡眠時にはシナプス結合が弱くなることをin vivo実験でも明らかにする、(ii) 覚醒時に活発に活動した脳部位と活動しなかった脳部位で、シナプス結合の変化の大きさに差があるかどうかを調べる。さらに、それぞれの脳部位での睡眠への影響についても明らかにする。具体的には、利き前肢を使った運動技能タスク(Skilled Reaching Task)を動物に課して、利き前肢側の大脳皮質運動野(よく使われた脳部位)と対側の運動野(使われなかった脳部位)で差があるかどうかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
前述したように実験は計画通り進んだが、睡眠による影響が予想(期待)以上であったため実験に使用する動物の匹数を計画より節約することができた。また実験例数を減らすことができたため、実験で使用する薬品等の消耗品の使用量も少なくすることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、実験の補助をしてくれる実験補助員を計画より増やすなどすることで、当初の計画よりもより早く成果を出していくことを目指したい。
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Research Products
(22 results)