2015 Fiscal Year Research-status Report
脳神経回路維持の基盤となる睡眠依存性のシナプス可塑性
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26507001
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
辛島 彰洋 東北工業大学, 工学部, 講師 (40374988)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 睡眠 / ノンレム睡眠 / シナプス可塑性 / 大脳皮質 / パッチクランプ / 断眠 / 脳波解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究によって、暗期終了時(朝8時)に作成した標本には直前にシナプス結合が強くなった痕跡が存在するが、明期終了時(夜8時)に作成した標本にはその痕跡が存在しないことを示す知見が得た。朝8時と夜8時に作製した標本で見出されたこの差は、断頭前に動物が主に覚醒している(朝8時)か、それとも眠っている(夜8時)かによってその差が生じていると我々は解釈しているが、24時間周期の日周リズムの位相の違いが影響している可能性を否定できず、差が生じる原因を未だ確定できていない。 そこで我々は、全ての動物で同じ日周リズムの位相において断頭するが、その直前に覚醒している動物と睡眠状態の動物に分けて比較する実験を計画した。そのため、ほとんどの動物が眠っている明期の開始時点において、動物を人為的に覚醒させて(断眠させる)、2つのグループを用意することとした。予備実験において、さまざまな断眠法を試したが、動物が眠っている時にケージを揺らす方法が安定して断眠できることが分かった。ただしこの方法は、リアルタイムで脳波等の生体信号から動物が眠ったかどうかを判定する必要がある。判定は、熟練した実験者が脳波等の視察によって行われる方法が普及しているが、この方法では断眠中に実験者は実験室を離れることができず実験者の負担が大きいという問題がある。この負担を軽減するため我々は、自動睡眠判定システムを製作することとした。具体的には、脳波・筋電図をリアルタイム(10秒間隔)で解析して睡眠-覚醒状態を判定するプログラムと、ノンレム睡眠と判定した時に適切な強さで飼育ケージをゆらす装置を作成した。この作成した装置で断眠ができるかどうか予備実験を行った。その結果、ノンレム睡眠の出現時間を半分以下に、レム睡眠は完全に剥奪できることが確認できた。平成28年度はこの装置を利用して研究を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は断眠した動物を用いて生理実験(in vitro実験)を行う計画を立てており、前半はそ計画通り実験を行った。しかしながら、in vitro実験の直前に行う断眠が、実験者への負担が大きすぎてなかなか実験例数を増やすのが難しかった。この問題を解決するために、自動断眠装置を作成することにしたことは、実績概要で報告したとおりである。この装置を利用することで、平成28年度は当初の計画を超えてより効率的に実験を進められると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは平成27年度に作成した断眠装置を用いて、断眠条件の動物においてin vitroパッチクランプ実験を行う。さらに、食事制限により生じるfood anticipatory activity(FAA)のように、よりマイルドな方法で睡眠時間を減少または剥奪させた時に、大脳皮質神経回路にどのような影響があるのかを調べる実験も行う。
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Causes of Carryover |
当初は、動物実験を中心に行う計画を立ており、生体信号計測で使用する消耗品(主に薬品)や計測結果を解析する際に使用する物品を計上していた。実際は、実験を効率的に実施することを目指して、人手を使わず自動的に動物を断眠できる実験装置の作成を主として行ったことは、前述したとおりである。そのため、使用額に差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、昨年度作成したこの断眠装置を利用することで効率的に実験を進められるので、当初2年目に実施予定だった実験と3年目の実験を両方実施する計画である。
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Research Products
(16 results)