2014 Fiscal Year Research-status Report
新規過眠・肥満マウスの解析による睡眠覚醒と摂食代謝制御の統合分子機構の解明
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26507003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三好 千香 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (60613437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船戸 弘正 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授(WPI-IIIS) (90363118)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 睡眠 / フォワードジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
過眠や過食・肥満は近年増加している非定型うつ病の症状として知られているが、その機序は不明である。われわれがフォワード・ ジェネティックスの手法によって新たに同定した Sleepy 変異マウス(未発表)は過眠と肥満を示すことから、睡眠覚醒と体重制御の脳内制御機構の解明に非常に有用な動物モデルになり得ることが考えられた。 これまでの解析で、原因となる遺伝子(Sleepy遺伝子)の変異の有無と総覚醒時間、体重には、強い相関があることを示してきた。 本年度は、ヘテロ変異sleepyで得られた睡眠延長、覚醒短縮の表現型が、ホモ変異Sleepyマウスにおいても同様に観察できるか検討を行った。その結果、ホモ変異マウスでは、より顕著な覚醒時間の短縮が見られた。さらに、概日リズムの恒常性について、通常の明暗周期および恒暗周期下に一定期間おくことで検討したところ、ホモ、ヘテロ変異体の両群において野生型との差は見られなかったことから、睡眠覚醒の恒常性は正常に保たれていることが示唆された。一方、エネルギー消費量においても、ホモ、ヘテロ変異体両群において、加齢に伴う低下が観察された。 現在、Sleepy遺伝子もしくはsleepyタンパクの日内変動や加齢に伴う分布や量的変化について検討を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sleepy変異マウスは、卵および精子は正常で発生には問題がないが、出生後、ホモ変異体では、一定の割合で生育に異常がみられる個体がある。また、繁殖行動に問題があり、各遺伝子型(ホモ変異、ヘテロ変異、および同腹野生型)マウスについて、実験に必要な数を確保することが非常に困難であることが、研究遂行上の最大の律速要因となっていた。特に、ホモ変異体は、自然交配による繁殖の能力が欠如しているため、仔を得ることができなかった。 問題の解決のために、年度の中盤までに、計画的に体外受精と胚移植を行う体制を整えた。計画的なマウス生産が可能になったことから、睡眠覚醒の判定の基となる脳波の測定、肥満の数値的裏付けとなる体重の経日的推移、摂食量やエネルギー消費量等の測定の用途に順次、必要数のマウスを供給することができるようになった。 本年度の計画では、特にホモ変異体の睡眠および肥満に関する基礎データを取り、表現型と遺伝子の変異との相関を確認することを大きな目的としていた。基本的な手法と評価方法を既に確立していたため、当初の目標通り、順調にデータの取得を進めることができたことから、当年の研究は、実施計画通りであり、概ね順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
過眠および肥満の表現型を持つSleepy遺伝子のホモ変異体およびヘテロ変異体マウスの生産を継続的かつ計画的に行う。 Sleepy 変異マウスでの睡眠覚醒および代謝もしくは摂食異常の分子機構を明らかにする一助として、睡眠遮断の影響を脳波のスペクトラム解析の手法を用いて解析する等、個体レベルでの詳細な検討を続行する。さらに、脳、特に視床下部における睡眠覚醒行動や摂食行動、エネルギー代謝を制御する遺伝子群の発現の変化について定量的PCR の手法を用いて分子生物学的な検討を行う。 また、繁殖行動に問題があることから、Sleepy 変異マウスの 不安やうつといった行動異常のパラメーターについても検討を行う予定である。
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