2014 Fiscal Year Research-status Report
広域・長期避難者の市民権保障に向けた政策・制度開発に関する領域横断的研究
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26510003
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
今井 照 福島大学, 行政政策学類, 教授 (40312764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舩橋 晴俊 法政大学, 社会学部, 教授 (20111445) [Withdrawn]
金井 利之 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40214423)
横山 彌生(礒野彌生) 東京経済大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60104105)
山下 祐介 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90253369)
高木 竜輔 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (30512157)
佐藤 彰彦 福島大学, 学内共同利用施設等, その他 (00634974)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 東京電力福島第一原子力発電所事故 / 広域避難 / 生活再建 / 復興計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究の目的は、東日本大震災と原発災害により、超長期・広域・大量の避難を強いられている被災者の生活再建と避難元自治体の活動を支援するために資する政策・制度を、政治学、行政学、法学、社会学等の各分野から領域横断的に探究することにある。 【年度計画】初年度は、被災者団体、原発災害避難自治体、学識者等との対話を通じて、現実に起きている諸問題から課題を設定することを目標とした。 【研究実績】本研究の目的を遂行するために、研究分担者と研究協力アドバイザーを構成員とする自治体再建研究会を組織し、平成26年4月29日、6月3日、7月8日、9月9日、10月13日、11月1日、12月2日、平成27年1月12日、3月23日の合計9回にわたって研究会を開催した。そこでは、必要に応じて、被災者団体、行政関係者、学識者等を招き、長時間にわたる討議を繰り返して現状の把握と分析に努めた。また、平成26年7月26日から28日にかけて、県外に避難している被災者や避難先自治体への訪問調査を行った。さらに、避難自治体の復興計画策定のための検討委員会を継続的に傍聴するなど、当事者との連携も進めた。その成果として、避難自治体が抱えている課題整理、避難自治体に関わるアクターの論理の把握、原発避難自治体の復興計画についての検討、などに取り組むことができた。さらに後掲の「研究発表」にあるように、現時点での成果を、多数の雑誌論文、学会発表、図書などを通じて社会に還元した。 【今後の研究展開】これらの成果を踏まえ、新年度では、復興計画と連動した避難自治体と避難者の復興に資する政策・制度開発を軸に、住民意向調査の分析、避難自治体の財政分析、避難自治体の土地利用のあり方と手法、などを、自治体政策研究会の場において具体的に調査研究することとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、被災者団体、原発災害避難自治体、学識者等との対話を通じて、現実に起きている諸問題から課題を設定することであったが、十分に目標を達成した。合計9回にわたる研究会開催、訪問調査、復興計画検討委員会傍聴等を通じて、社会科学の諸分野にまたがる専門性を融合させるとともに、当事者との連携による実学的アプローチをとることで、理論的かつ実証的な研究成果の実現に一歩を踏み出した。具体的には次のとおりである。 【原発避難自治体の抱えている課題についての整理】町内市街地が帰還困難区域と居住制限区域で分断されていること。それに伴い賠償などで格差が生じていること。現時点で帰還意向を示している住民は1割強。帰る人による偏った人口構成の自治体。自治体職員の抱えている問題。 【原発避難自治体に関わるアクターの論理】避難者受け入れ自治体…福島県との連携が乏しい。国からの支援メニューがなくなりつつある。復興庁…あくまでも帰還支援。広域避難については対象外。避難者…避難元との関わりが難しくなっている。避難先コミュニティになじみつつある。受け入れ市民団体…支援疲れが出ており、活動休止する団体が多くなっている。 【原発避難自治体の復興計画についての批判的検討】原発避難自治体の復興における四つのシナリオが、(1)没入シナリオ(自治体再生)、(2)被害者シナリオ(自治体転生)、(3)反省シナリオ(自治体更正)、(4)凍結シナリオ(自治体凍結保存)として整理され、加えて(5)希望のシナリオが提起された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を踏まえ、今年度以降には、これまで析出された課題を「生活再建」「市民権保障」「自治体支援」の3分野に整理し、それぞれにふさわしい手法によって、政策・制度の開発を目指す。具体的には、避難自治体への「帰還」「移住」「将来帰還(避難継続)」のいずれの場合においても住まいの確保を基本とする生活再建政策の開発、超長期・広域避難者が避難先自治体と避難自治体とに二重に帰属している現状を踏まえた市民権保障政策の開発、避難者を支える避難自治体の存立の維持可能性に関する政策の開発、などがあげられる。 具体的には、「第三の道」を保障する政策・制度設計、住民意向調査の分析、原発避難自治体の財政見通し、土地利用のあり方(土地の権利、復興拠点などの空間計画、土地利用規制など)、没入シナリオの提示(このまま進むとどのような地域になるのか、誰が得をするのか、住民はどうなるのか、財政はどうなるか)、伝える作業、もうひとつの復興計画の作成、などを計画している。 今年度以降も定期的に自治体再建研究会を開催し、研究協力アドバイザーを含めて討議を重ねる。また当事者(避難者、避難自治体、避難先自治体等)への聞き取り調査を継続して、必要に応じて他分野の学識者の意見を聴取する。その上で、中間的な研究成果の報告をとりまとめ、最終年度の報告につなげる。
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Causes of Carryover |
2014年7月26日から28日にかけて、新潟県に広域避難している避難者と受け入れ自治体に対する訪問調査を実施したが、日程調整の関係から予定していた参加者数に至らず、残額が生じたため、次年度の訪問調査費用に充当する。 また、研究会において学識経験者等を招聘してヒアリングを行ってきたが、日程調整の関係から予定していた人数に至らず、残額が生じたため、次年度の招聘費用に充てることとする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度使用計画 物品費 0円、旅費1,026,058円(当初1,000,000+繰越26,058円)、人件費・謝金350,000円(当初300,000円+繰越50,000円)、その他200,000円。
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Research Products
(30 results)