2015 Fiscal Year Research-status Report
原子力発電所事故に伴う損害賠償制度に係る実証的研究
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26510021
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
久保 壽彦 立命館大学, 経済学部, 教授 (00454512)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原発事故と損害賠償 / 原発損害賠償制度 / 会社更生手続 / 企業再生 / 電力会社会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマである「原子力発電所事故に伴う損害賠償制度に係る実証的研究」について、平成27年度は、平成26年度に引き続き以下を実施目標として研究活動を行った。 1.本研究に係る情報収集および研究機関との連携について、国立国会図書館発出の原発損害賠償関係情報の収集、その他多くの文献情報を同図書館から収集した。また、福島県弁護士会とは継続的に連携し、21世紀政策研究所からは、実に3700頁(『原子力損害賠償制度資料集』)に及ぶ資料の提供を受けた。なお、平成27年5月より、内閣府原子力委員会において「原子力損害賠償制度専門部会」が立ち上がり、原子力損害・廃炉等支援機構法に規定されている同制度の見直し作業に着手されている。この専門部会の議論の方向性についてもフォローを行った。 2.研究機関・研究者との連携については、21世紀政策研究所との連携を進め、本研究に係る論文作成等に寄与させることができた。また、一橋大学渡邊智之教授や本学経営学部金森絵里教授との研究情報の交換等に係る連携、さらには名古屋大学森嶌昭夫名誉教授による本研究に係る指導を得ることもできた。 3.研究会・講演会・シンポジウムへの参画については、2015年4月に本学商法研究会において、第一線の商法・会社法研究者に対して研究発表し、また、2015年12月本学『土曜講座』において、一般市民を対象に研究報告を行った。 4.本研究をテーマとした論文については、立命館経済学にて2度発信し、平成28年度の研究への布石とした。また、前述の発出論文等が他の研究者の論文にも引用され、特に前述の専門部会のメンバーである一橋大学山本和彦教授は、発出論文を契機に『非常時対応の社会科学(法学と経済学の共同の歩み 』において、『原子力発電所事故を起こした電力会社の会社更生手続試論』という論文を公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に引き続き本研究に係って、以下の論文と研究発表等を行った。 論文として、①福島県における震災復興の課題-原発損害賠償制度等を中心に-(立命館経済学第64巻第1号、平成27年5月)、②原発損害賠償請求権と共益債権(1)(立命館経済学第64巻第5号、平成28年3月)、研究発表として、①立命館大学商法研究会(テーマ:原発損害賠償請求権の課題等、平成27年4月)、②立命館大学『土曜講座』(テーマ:東日本大震災からの復興に係る課題、平成27年12月)。 上記から、平成26年度および平成27年度の研究成果としては、概ね順調に進捗していると考える。 また、平成27年度については、平成26年度の他大学との情報連携や福島県弁護士会との情報共有などを継続するとともに、他大学や本学研究者との交流も進み、また筆者論文を引用したうえで、その後新たな展開を図る研究成果も報告されている。さらには、研究発表や講演なども行い、論文や研究会等における周知についても概ね行うことかでき、研究成果の発出についても十二分に行えたのではないかと考える。他方で、経団連21世紀政策研究所より情報提供された『原子力損害賠償制度資料集』については、3700頁という相当のボリュームであるため、その詳細分析については、平成28年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度につき、原子力発電所事故を惹起した電力会社が巨額の損害賠償債務によって法的整理等を選択した場合の原発損害賠償制度の有り様等本研究の課題とした事項について、一定の方向性を模索し、論文や研究発表、パブリックコメント等で広く社会に発信できればと考えている。具体的な手法につては、以下の通り昨年度方策を基軸に今年度も対応したい。 ①本研究に係る情報収集及び②研究機関等との連携について、平成26年度および平成27年度においても一定の成果を見たが、平成28年度においてもそれらとの関係の継続を図り、情報収集・情報共有等を行っていきたい。また、電力会社の決算分析について、各電力会社へのヒヤリングを予定していたが、それが難しいため、電力会社の会計制度の専門家である本学経営学部金森絵里教授などに助言を得ながら研究を深化させたい。③研究会・シンポジウムにおける研究発表等についても平成27年度において既に行ったが、さらに学内外の研究会等において、現状の研究の成果として発信をして行きたい。 ④原発損害賠償に関わる研究文献等の収集については、内閣府原子力委員会内原子力損害賠償制度専門部会の検討状況をフォローし、同研究会において原子力損害賠償制度見直しに関する情報が発出された場合、パブリックコメントなどの方法により、新たな損害賠償制度として提言を行いたいと考える。
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Causes of Carryover |
・本年度は国会図書館等による情報収集に多くの時間を要し、また本務校の公務により被災地への出張ができなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被災地、特に福島県への出張を積極的に行い、また、倒産処理法や事業再生に関係する研究会への出席(主に東京)、また国会図書館へ出張することによって継続的に情報収集を行っていきたい。
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