2014 Fiscal Year Research-status Report
津波被災農地の暗渠排水による除塩機構解明と予測対策システムの開発
Project/Area Number |
26511009
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
徳本 家康 佐賀大学, 農学部, 助教 (80445858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
千葉 克己 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00352518)
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
藤巻 晴行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (90323253)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 津波被災農地 / 除塩 / 暗渠 / フィールドモニタリングシステム / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,津波被災農地の復興を支援するために,雨水と暗渠排水における除塩効果促進による早期稲作の営農再開に向けた暗渠排水システムの技術改良および作物生育予測を行うことを目的とした.
平成26年度には,塩分濃度の高い(海水の混入した)地下水面を持つ被災農地において,雨水による除塩観測を重点的に行った.従来の地下水位および地下水の電気伝導度の観測にくわえて,土壌中の水分量と塩分量の変化を土壌水分量と電気伝導度で評価するための観測システム(FMS)を構築した.FMSは,土中の水分量や塩分濃度を自動計測し,そのデータをFMSを介してインターネット上で閲覧することを可能としたため,遠隔地からの農地の状況把握およびデータの収集を容易にした.これらの観測結果によって,(1)海岸近傍の水田では地表面付近の土中の塩分濃度が低く,地表から深さ50cmほどの地下水近傍において塩分濃度は高い傾向が見られた.(2)降雨後には,農地が湛水化することもあり,真水層の形成が塩分濃度の高い地下水位を下方へと封じ込める要因になっていることも明らかになった.(3)しかし,塩分濃度の高い地下水位は地表面付近に達することも頻繁に生じたため,地下水位を低下させる排水機場の稼動が重要であると示唆された.
これらの成果から以下の点が明らかとなった.(1)沿岸部の稲作地帯の除塩法には地表面から流入する雨水や灌漑水によって土中の塩分を下方浸透で洗い流す方法が有効である.(2)地盤沈下した農地において,塩分濃度の高い地下水の根群域への侵入の軽減を促すことが根本的課題である.それら課題解決に向けて,暗渠や地下水位の位置が除塩に与える影響を検討する必要があると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遠隔地から土壌情報のデータ収集が可能な観測システム(FMS)に時間領域透過法(TDT)の土壌水分センサーを導入することで,高水分・高塩分土壌における水分・塩分観測を可能とした.装置や土壌水分・塩分センサーの動作確認を行い,9月には宮城県の津波被災農地である岩沼市と東松島市にFMSを設置できた.両圃場ともに,瓦礫の撤去などは終わり,圃場整備段階における土中の水分量・塩分量の観測は行えているため,研究は概ね順調に進んでいる.
岩沼市の圃場においては,冬季にリーチングによる塩分濃度の低下が確認されており,3月下旬に弾丸暗渠などの整備が完了している.H27年度から田植えが開催される予定である.そのため,弾丸暗渠による除塩の促進効果および生育調査について,今後にデータの蓄積を図る予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
岩沼市の試験区は作土の透水性が高く,深度-15cm程度に難透水性層(耕盤)が発達していた.事前研究によって,これらの試験区では雨水と弾丸暗渠による除塩効果が確認されているが,観測データに基づき,より除塩効果の高い暗渠排水特性を逆解析的に求めることは新たな暗渠施工設計に有用である.とくに,弾丸暗渠および排水機場による除塩効果に加えて,現在では潮受け水路の建設が検討されている.これは,塩分濃度の高い地下水上部に真水層の形成するものであり,塩濃度の高い地下水位の深さを下方へ移動させる効果が期待されている.そこで,シミュレーションによる2次元的な土壌水分・塩分移動の解析を行い,実測データと比較・検討する予定である. 東松島市の圃場においても,土性の違いなどを考慮して,弾丸暗渠や潮受け水路の数値実験を試みる予定である.
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