2015 Fiscal Year Research-status Report
日独豪比較による新しい環境研究の探求:環境危機対応としての政策・研究の過去と現在
Project/Area Number |
26512007
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
喜多川 進 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00313784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 康 千葉商科大学, 人間社会学部, 教授 (10262388)
辛島 理人 関西学院大学, 付置研究所, 研究員 (20633704)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境政策史 / 環境政策 / 環境学 / 環境危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境政策・環境研究の来歴をつぶさに見るには政治学や経済学のモデル分析のみでは限界があり,歴史的視点が必要になるが,そういった研究は環境政策研究が精力的になされている今日においても殆ど行われていない。そこで本研究は,研究代表者らが提唱してきた環境政策史(Environmental Policy History)の視点に基づいた,環境政策の展開過程の詳細な解明を目的としている。27年度の実施計画は,26年度の成果をふまえつつ,環境政策史研究をさらに発展させるというものであった。そして,27年度には以下の成果をあげた。 1. 日本における環境研究の展開:前年度に引き続き,公害研究委員会に関する資料収集及び関係者への聞き取り調査を実施した。特に,公害研究委員会の重要な関係者に焦点を当て,その軌跡を通じて環境研究の発展要因を解明した。そして,公害研究委員会をはじめとする日本の公害研究の意義を再評価した。その際,日本の公害研究に関する先端的な研究者であり,本研究における海外共同研究者であるSimon Avenellオーストラリア国立大学准教授とも議論し,世界史的見地からの日本の公害研究を捉え直した。 2. 日本,ドイツ,豪州における環境政策の展開過程について考察し,公害・環境規制が関連技術の開発・普及をどのように促したのか検討し,排出規制が技術開発・普及に結び付いたメカニズムを解明した。また,本研究では,環境保全自体の価値よりも経済的利益のために環境政策を追求する行動原理を「環境リアリズム」と位置づけ,環境リアリズムに関するケーススタディを進めた。さらに,アメリカ合衆国の日独豪の環境政策への影響を検討するために,1960-70年代のアメリカ合衆国の環境政策についてロックフェラー史料館所蔵のフォード財団関連文書を収集し,アメリカ合衆国と日独豪の政策面及び学術研究面での関連性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3名のメンバーは学術書単著を刊行するとともに,論文,学会報告を着実に進めた。また,これまでほとんど注目されていない文献資料および口述資料の収集を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は,オーストラリアでの長期調査をおこなうとともに,その他の事例調査を推進する。そしてこれまでの理論的及び実証的研究の取りまとめをおこなう。
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Causes of Carryover |
本研究における海外共同研究者であるオーストラリア国立大学のSimon Avenell准教授の日本への渡航費用が格安航空券の手配により想定額を下回ったこと,インターネットを通じた文献収集が当初計画以上に進んだことと,他の用務での出張の際に東京等での文献収集をあわせておこなうことができたため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インターネットで収集可能な文献がある一方で,本研究対象のひとつである豪州の環境政策および環境研究に関する文献は同国内に散在しているとともに体系的に整理されていないので,現地での収集に頼らざるをえない。また,豪州での関係者への聞き取り調査も必要である。そのため,次年度使用額は,その豪州での長期現地調査のために使用することを計画している。
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Research Products
(12 results)