2016 Fiscal Year Research-status Report
準市場・介護保険サービスにおける営利・非営利事業者比較の実証分析
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26512011
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
金谷 信子 広島市立大学, 国際学部, 教授 (20509062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 介護保険 / 準市場 / グループホーム / サービスの質 / クリームスキミング / 非営利事業者 / 営利事業者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度に収集した介護保険事業所グループホームの経営状況のデータベースを再度見直して整理を行い、非営利事業者と営利事業者の行動を比較するために計量分析を行った。 まず関連する先行研究を収集し、論点を整理した上で、分析の枠組を考えた。具体的には、利益追求目的のためにサービスの質が犠牲にされる、あるいはクリームスキミングが起こる可能性を、利益の最大化を目的とする事業者(主に営利事業者)と社会的価値の最大化を目的とする事業者(主に非営利事業者)の行動を比較することにより検証した。さらに当初の期待通り、準市場で質の高い事業所が成長している可能性を、サービスの質もしくはクリームスキミングと、介護保険事業の規模の関係を分析することにより確認した。その上で、準市場に内在する課題について考察した。 現段階で得られた結果によると、全般的に非営利法人の方が営利法人より質が高いという傾向が明らかになった。ただサービスの質の指標や非営利法人の種類によって、若干傾向が異なる。 施設の整備および介護・看護職員の数、介護職員の専門性・経験および介護職員の離脱の少なさの点で、非営利法人のサービスの質は営利法人と同等かそれ以上であった。クリームスキミングに関しては、営利法人の方がすべての非営利法人より明らかに多いという結果になった。 また介護保険事業の規模との関係では、クリームスキミングにより事業者は事業収入を増やす可能性があるが、サービスの質の向上は内容によりその効果がまだらである傾向がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
介護保険事業における非営利・営利事業者の経営行動を比較するためのデータベースはほぼ完成し、単純集計結果をまとめて、公表する準備を進めている。 同時に、様々な視点(サービスの質、クリームスキミングなど)から、非営利・営利事業者の経営行動を比較する計量分析を行った。これらの結果も順次公表できるよう論文執筆を進めている。 また介護保険事業者に対するヒアリングも行ったが、未だ予定数には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集・整理したグループホーム事業所のデータを利用して、より多くの視点(サービスの質、クリームスキミング、規模・範囲の経済など)から非営利・営利事業者の経営行動を比較し、その類似性と相違性について、出来るだけ多くの知見を得るようにしたい。その上で学会発表・論文などにより、その成果の公表に努めていきたい。 また介護保険事業者に対するヒアリングを引き続き行い、介護保険制度改正後の介護保険事業者の最新の動向にも留意して研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度はデータ分析を中心に研究を行ったが、学務等との関係で事業者・関係者のヒアリング調査等を十分に行うことが出来なかったため、次年度に繰り越し、追加の調査を行う予定。
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