2016 Fiscal Year Research-status Report
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26512012
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 洋一 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (50201934)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EU / 司法政治 / 憲法裁判所 / 市民権 / 政策形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度後期も,東京大学での共同授業の機会を利用し,ほぼ毎週研究状況に関する意見交換を行いつつ研究を進めた. 個別の研究としては,伊藤は,一部未公刊史料を含む,フランスにおける憲法院の評議記録を検討を基礎とする研究を発表した,これは,第五共和政の下でヨーロッパ法の影響を伝統的な主権観念に基づく国内法の階統秩序を調整する際に,政治部門と司法部門の間にいかなる関係があったか,さらには系統の異なる司法部門(国務院,破棄院,憲法院)の間にどのような相互作用があったか,を明らかにするものである. 網谷は,「市民権」概念をテコとするヨーロッパレベルの司法の政策的影響が,各国の社会秩序と衝突する際に生み出されるダイナミクスを分析した英語論文を公刊した.政治部門と司法部門の相違として,後者においては「個人の権利」を核とした議論を行うことが前者への対抗上説得的であること,また欧州司法裁判所は超国家的な司法機関であるため,各国裁判所とは異なり特定の社会秩序像に依拠できないため,個人主義的な「市民権」のロジックが前面にであるのである.また,同様な問題関心から,社会政策における市民権概念の分析において鍵となる反差別政策に関する論文を執筆・公刊した. これらの研究はいずれも,司法部門が「法」を政治部門に対する盾として統合を牽引しているという新機能主義的な見解,そうではなく政治部門が終局的には司法判断を制約していると見る政府間主義的な視角,という二者択一から脱し,両者の相互関係と条件付けを検討する段階に入ったEU司法政治の最新の展開に沿うものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は概ね順調に進んでおり,研究成果の更なる発表準備を進めている.ただし事情により本年度予定していた学会報告が行えなかったため,次年度に成果発表を持ち越すこととしている.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度には,代表者である網谷が本務校の研究専念期間を利用して,研究分担者である伊藤の所属する東京大学大学院法学政治学研究科の客員研究員を務めるため,この機会を利用して最終的な成果の取りまとめのための作業を集中的に行う.また,本研究の全体的な成果について,年度内に論文を公刊する見通しである. その際,近年の注目すべき指摘として,ドイツの元憲法裁判所判事でもある公法学者Grimmが,EUの「過剰憲法化over-consitutionalization」が欧州司法裁判所の影響力の大きさにつながっていると述べていることに注目し,さらに司法政治一般の中でのEU司法政治の特徴とその政策的影響を明らかにしたい.
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Causes of Carryover |
2016年度に国外での学会報告を予定していたが,事情によりこれを行うことができなくなったため,研究成果の発表を2017年度に持ち越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には,代表者である網谷が本務校の研究専念期間を利用して,研究分担者である伊藤の所属する東京大学大学院法学政治学研究科の客員研究員を務めるため,この機会を利用して最終的な成果の取りまとめのための作業を集中的に行う.また,本研究の全体的な成果について,年度内に論文を公刊する見通しである.
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Research Products
(4 results)