2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26520101
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 麻己人 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50254941)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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Keywords | モデル動物 / 集団飼育 / ゼブラフィッシュ / ストレス / 発がん / 老化 / Nrf2システム |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者数が増加する将来の社会では高齢者の多様化が予想される。この多様化理解のためのモデル動物が乏しい現状を打破するために、本研究ではゼブラフィッシュ活用の有効性調査を目的とした。これまでゼブラフィッシュ個体の識別法確立と老年度測定手段の構築を行い、これを用いて野生型種を用いた老年度の観察を行ってきた。その過程で、老魚の健康に若魚との同居が影響する可能性を示唆する結果を得た。即ち、老雄魚単独もしくは老雄魚と若雄魚を同居させた場合より、老雄魚と若雌魚を同居させた場合の方が老雄魚の健康が維持される傾向を見出した。ただし、有意とするには解析数や測定手段が不十分であり、再度試みているところである。 問題点は予想以上にゼブラフィッシュの老齢化が遅い点であり、解析期間を早く短くしたいと考えた。そこで本年度からNrf2遺伝子破壊系統を用いた解析を開始した。Nrf2はヒトを含む脊椎動物がもつ健康維持装置Keap1-Nrf2制御系の主要因子で、早老症での活性著減や長寿動物で活性亢進などの報告がなされ老化や健康寿命に密接に関係することがこの2,3年で急激に明らかになっている。Nrf2ホモ変異成魚を活用すれば老年度測定をより早くできると予想し、まずその予想の検証を行った。これまで1年齢までの健康度を測定したが、野生型成魚との違いは見出せなかった。1年半齢で致死率の高まるとの共同研究者の情報があり、引き続き次年度の課題とする。 一方、Keap1-Nrf2制御系を活用した老化予防法をゼブラフィッシュで探索できるようにすることを目指し、ゼブラフィッシュの健康に対して効果を発揮する健康食品有効成分の探索と評価を開始した。今年度は11種類のNrf2活性化有効成分を効果を解析し、そのうち数種類がゼブラフィッシュ個体において抗酸化ストレス活性や抗亜ヒ酸毒性活性を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老年度測定システムはほぼセットアップされ、実際に測定を開始することができた。また、Nrf2システムと健康度の解析を行い、その活性化の仕方の重要性を示すことができた。さらに、がんモデルとなることが期待される、Nrf2を遺伝学的に常時活性化する遺伝子改変系統の作出にも成功した。これはKeap1というNrf2の抑制因子をCRISPR-Cas9法でノックアウトした系統であるが、生後すぐに致死となるKeap1遺伝子破壊マウスと異なり、ゼブラフィッシュの場合, 成魚まで育つことが明らかとなった。一方で、野生型系統を用いた解析では、飼育方法の違いによる老年化の変動を見出すことはできなかった。老化しやすいと期待されるNrf2ホモ変異系統の大量育成を行い、これを用いた解析を行っているが、1年齢成魚の段階ではまだ野生型との差は見いだせていない。 一方Nrf2システムを活性化する各種機能性食品の有効成分が、ゼブラフィッシュの健康にどのような影響を与えるかを調べる研究に関してはかなり進展している。ブロッコリースプラウトの有効成分であるスルフォラファンが酸化ストレスや小胞体ストレスの障害をNrf2異存的に緩和することを個体レベルで実証できた。ただし、亜ヒ酸毒性や水銀毒性に関しては共毒性も発揮してしまい、むしろ致死性を高めることを見出した。こうした成果は、2報の学術論文に報告した(Mukaigasa et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2018; Fuse et al., Free Rad Biol Med, 2018)。さらに、このスルフォラファンの弱点を克服するような食品有効成分を探索したところ、いくつか候補が浮かび上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
Nrf2ホモ変異系統の雄の老年度測定を引き続き行う。さらにNrf2を常時活性化するKeap1遺伝子破壊系統の老年度解析も開始する。健康寿命は伸ばすががん化は抑制される可能性を探るために、がんになりやすいTP53変異系統との交配も行っている。まずは、コンパウンドホモ成魚の大量育成を行う予定である。Keap1遺伝子の単独破壊系統に関しては、各種ストレスや毒性に強くなっている部分を取り出して論文報告する。 一方、Nrf2を安全で効果的に活性化する健康食品有効成分の探索も引き続き行っていく。今年度、24穴プレートでスクリーンするシステムを構築したが、次年度はよりハイスループットにするために、96穴プレートのシステムを開発する。
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Causes of Carryover |
論文採択が遅れ、論文投稿料等を年度末に支払うことになったことに加え、一歳齢においてNrf2ホモ変異成魚が野生型と明瞭な違いを見せなったため、十分な成魚解析ができなかった。翌年度分として請求した助成金は、前述の論文投稿料等及び成魚解析費に使用する計画である。
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[Journal Article] MafB is a critical regulator of complement component C1q2017
Author(s)
Tran, M.T.N., Hamada, M., Jeon, H.J., Shiraishi, R., Asano, K., Hattori, M., Nakamura, M., Imamura, Y., Tsunakawa, Y., Fujii, R., Kulathunga, K., Andrea, C.S., Koshida, R., Kamei, R., Matsunaga, Y., Kobayashi, M., Oishi, H., Kudo, T. and Takahashi, S.
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Journal Title
Nature Commun.
Volume: 8
Pages: 1700
DOI
Peer Reviewed
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