2015 Fiscal Year Research-status Report
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26520207
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今村 寿子 (滝川寿子) 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30523790)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | 数理モデル / 植物細胞壁 / 葉表皮細胞 / 形態形成 / 座屈 / シロイヌナズナ / 画像解析 / 細胞間応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの葉表皮細胞がジグソーパズル状に変形するメカニズムについて、数理モデルを構築し仮説を検討した。仮説として、細胞成長に伴いlateral側の細胞壁が伸展し座屈することにより、湾曲が生じる可能性を考えた。これを表現するため、細胞の成長とそれに伴う変形が表せる系を構築した。細胞を細胞壁とプロトプラストで成るものとして単純化し、それぞれを質点の集合としてモデル化した。質点がほぼ均一に分布するように質点間斥力/引力が働くとし、構成する質点を増加させることで細胞成長を表現した。プロトプラストを構成する質点の分布に異方性を取り入れることで、細胞の異方成長を表現した。細胞壁には曲げ弾性を仮定して、張りのある構造を保つものとした。本モデル系を用いて細胞成長をシミュレートすると、次第に細胞壁の湾曲が起こり、自発的な細胞の突出と陥入の形成が再現できた。等方的細胞成長を仮定すると、細胞壁の伸長に対して、細胞面積の増加がより速い場合には細胞は円形に近づき、遅い場合には形状が複雑化した。異方的細胞成長を仮定すると、湾曲構造の振幅が小さくなり、葉柄細胞様の形状が得られた。湾曲構造の波長は、細胞壁の曲げ弾性に依存し、細胞サイズを小さくすると波数が少なくなることも分かった。以上のモデルから得た結果は、シロイヌナズナの葉表皮細胞が示す多様な形状と一致していた。さらに、局所的な細胞成長を組み込んだモデルも作製し、先の単純化したモデルと比較したところ、局所的な細胞成長を含む場合と含まない場合が、それぞれ野生株とric1変異株の細胞変形課程を再現していると考えられた。本研究により、変異株が細胞成長制御に異常をきたしているにもかかわらず細胞壁湾曲を示すメカニズムが予測された(投稿済み)。ここで構築したモデルフレームワークを応用して、植物の組織変形に関する共同研究を新たに3つ立ち上げ準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文投稿に際してモデルの改良を行い、植物生物学的な妥当性の高いモデルを提案できた。同時に、数理的に面白味のある研究へ発展させるための方向性も定まり準備をしている。また植物生物学領域における共同研究の機会が増え、数理モデル研究の有用性を示す機会が増えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
葉表皮細胞について、細胞変形により成長方向が制御されることをモデルに組み込んで、形と機能の相互作用の数理モデルを構築する。他の現象に関する共同研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究状況から平成28年度に旅費、人件費、謝金を多く使うことが見込まれたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿に際しopen accessの追加料金、共同研究先との打ち合わせ(8回見込み)、年度後半における研究補助者雇用費用の一部として使用する。研究補助者用の計算機の購入にあてることも検討している。
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Research Products
(7 results)