2016 Fiscal Year Research-status Report
ディオファントス方程式の変換とクリプトシステム原理の新展開
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26520208
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平田 典子 (河野典子) 日本大学, 理工学部, 教授 (90215195)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2018-03-31
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Keywords | 公開鍵暗号 / ディオファントス方程式 / ディオファントス近似 / 鍵交換プロトコル / 鍵共有方式 / 多項式環 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究は,極めて大きく進展した. まず研究代表者が2010年から2013年にかけてハンガリーの研究者A. Pethoと考察し改良した「Yosh方式」という名前の鍵交換プロトコル暗号方式の発展形を根本的に見直し,新たなクリプトシステム(暗号原理)の構築を可能とするような一つの基本構想を確立したということである.そこではディオファントス方程式とその整数解という数学的対象を抽象化して,ディオファントス方程式の変形のもととなる多変数多項式環の間の全射および単射写像を特徴づけるJacobian予想と,その関連分野における研究の成果を適用させることを考えた.そして多変数多項式環の上の無限個の適切な全単射写像の新しい構成方法と,それに基づく具体的な暗号方式を,新たに鍵共有方式という形で提案した.研究協力者の秋山浩一郎氏に加え,当該年度にはアフィン代数幾何学の専門家との研究討議をおこなって,Jacobian予想周辺の知見を得るための協力を要請した.基本構想については2段階の成果発表を暗号の専門家を聴衆とする研究集会で実施した.講演の場で得られた有効な意見を加えて精査し,最終年度に向けての論文を執筆中である.関連するアイデアに基づいた代数学の論文もとりまとめた.なお同じ基盤の手法に基づく別の論文としては,整数で整数に近い値をとる整関数についてディオファントス近似に負う方法を適用させた結果を示した古津博俊氏との共同研究1本が出版された.またディオファントス近似の手法を別の数学的対象に適用させた結果に関する伊藤勝氏および鷲尾勇介氏との共著論文1本が査読を通り,出版される予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には企業の研究者1名との討議を通して,新たな暗号原理構築についてのアイデアを獲得したのみならず,アフィン代数幾何学の専門家1名との議論をおこなったことにより,当該研究の主たる成果としての基本的な暗号原理についての新奇性の高い構想をまとめることができた.特に多変数多項式環の自己同型についての黒田 茂氏(首都大学東京)の優れた結果を効率よく適用して,自己同型を与えるためのアフィン代数幾何学の先行研究の知識を有効に活用することができたといえる.全単射写像の次数をそれほど高くしないような工夫を考察することが現実的には必要であり,これらの課題について研究代表者らが持っている構想を発展させ,最終年度の結果統括を鋭意遂行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時には予定していなかった着想を議論中に思いつき,その精査のためにアフィン代数幾何学の専門家を訪問して実施した研究討議のおかげで,Jacobian予想との関連における重要な考察を得ることができた.専門家との討議から得た,多変数多項式環の自己同型およびその特徴付けに関する知見を応用して,攻撃に耐えうるような多変数多項式環の自己同型の考察を進める.新しい研究協力者である黒田 茂氏(首都大学東京),中村周平氏(日本大学),伊藤 勝氏(日本大学)との研究討議を密にしながら,数学的に斬新であるばかりではなく,安全性を高めるために変数の個数を多くする工夫を考案して,ディオファントス方程式の変換を用いた暗号原理を最終年度に確実に創成することを目指す.
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