2015 Fiscal Year Research-status Report
キノコ廃培地を反芻刺激機能を持つ粗飼料として再利用するための技術開発
Project/Area Number |
26520305
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
神 勝紀 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (40215166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 豊 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00542911)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | キノコ培地 / スイートコーン茎葉 / 発酵 / 栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:本研究の目的はキノコ廃培地を牛用の粗飼料として再利用することであり,そのために地域バイオマスであるスイートコーン茎葉を長めに切断してキノコ培地原料に用いた。前年度の結果から、スイートコーン茎葉は乳酸発酵させてもあまり柔軟にならず,特に切断長が長い時に栽培瓶充填が困難になること、および乾燥茎よりも乳酸発酵茎(FCS)の方がキノコ栽培時の害菌発生が少ないことが判明した。そこで、今年度は柔軟化したFCSを用いて、キノコの栽培試験を行った。
方法:平成27年9月に収穫したスイートコーンの茎にハンマーで打撃を与えて柔軟にした後にチョッパーで、13mm、22mmおよび30mmに切断し、線維分解酵素を含むサイレージ用乳酸菌を加えて乳酸発酵させた。このFCSで培地中のコーンコブを段階的に置換した培地を作成してキノコを栽培した。キノコ種は長野県の主要品種であるエノキタケを用いた。
結果:FCSの置換率が高くなるとエノキタケの菌廻りが阻害されたが、中には高置換率でも菌が廻る場合があった。この菌廻り遅延の原因を調査したところ、蒸気殺菌時にFCSが膨張したことによる接種孔の狭窄と判明した。そこで次の実験では,培地の接種孔に木製の棒を差し込んだまま蒸気殺菌したところ接種孔は維持され,菌回りの阻害は生じなかった。このときFCS添加によって菌廻りが遅くなったが,FCSの線維長はこれに影響しなかった。菌掻きを実施したとき,対照区,S区およびM区の培地表面は平滑であったが,L区とLL区では茎の露出によって凸凹が目立った。このような培地表面では形状の良い子実体を得られないため,次の実験では培地表面をFCSを含まない培地で覆うことによって解決した。以上の方法で,FCSを含む培地でエノキタケの栽培は可能になったが,27年度末までに動物試験の実施に充分な廃培地を得るに至らず,動物実験は実施し得なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FCSの柔軟化:昨年度は茎葉が硬く作業性が低下したことから,柔軟なFCSが求められた。今年度はスイートコーン茎葉を事前にハンマーによる打撃によって柔軟化し,それをチョッパーで切断することで,培地との混合および栽培瓶への充填が容易になった。この点における達成度は高いと判断された。
菌廻り:柔軟化したFCSを培地利用したとき害菌の発生は殆どなく,この点においては問題はなかったが,予想外なことにFCSの添加によって菌廻りが阻害された。代表者の過去の研究によると,乳酸発酵したリンゴ粕を培地添加すると,エノキタケの菌廻りは2-3日遅れるが,子実体収量は増加することから,今回見られた菌廻りの阻害は乳酸発酵の影響ではないと考えられた。そこで,菌廻り阻害の原因追究と問題解決を行い最終的に解決したが,このために予定外の時間を要し,達成度が低下した。
FCSの量:26年度は乾燥茎とFCSの両方を調整したが,実験の結果,乾燥茎は物理性が悪く,しかも害菌発生が多かったため,不適と考えられ,27年度はFCSだけで実験することになった。その結果としてFCSの準備量が充分でなく,27年度の前半は多くの実験を行うことができなかった(スイートコーンの茎葉は9月まで入手できない)。実験が順調に進み始めたのは新たな茎葉を入手した10月以降であったことから,実験の回数が少なくなり,廃培地量が十分に確保できず,予定されていた動物実験を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の前半はFCSが不足したため充分な実験が行えなかったことを踏まえて,27年の秋には大量のスイートコーン茎を入手し,充分な量のFCSを調製した。したがって,28年度は年度当初から多くの実験を行うことが可能となっている。
FCSによる菌廻り遅延の原因については不明であるが,FCSの粒度が大きいためにpH調整剤が中まで浸透せず,培地のpHが均一にならないことが一因と考えられる。この点については,現在,乳酸除去FCSを利用した培地を作成して栽培試験が進行中であり,28年度の前半で結論が得られると思われる。
もし,菌廻り遅延の問題が解決されなくても,キノコの栽培自体は可能であるので,28年度の中旬までに一定量の廃培地を得て,ヤギまたはヒツジを用いた飼養試験を実施することが可能である。廃培地が得られたら,乳酸菌で処理して保存性を向上させた後に動物に給与し,本研究の核となる廃培地の反芻刺激機能について重点的に調査する。動物の数は対照区,実験区とも3頭ずつとして,ラテン方格法で実施する。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価で消耗品が購入できたため。また学会発表に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額とH28年度請求額をあわせて消耗品を購入する。
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