2014 Fiscal Year Research-status Report
選択的な防除法の確立に資する寄生雑草に特有のプランテオース代謝経路の解明
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26520310
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岡澤 敦司 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10294042)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | ハマウツボ属 / ストライガ属 / 寄生植物 / ノジリマイシン / インベルターゼ / 選択的除草剤 / メタボロミクス / プランテオース |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生雑草は世界の乾燥~半乾燥地域の農業に甚大な被害を与えており,アフリカでの食料生産の不安定化を引き起こす最大の生物的要因といわれている.研究代表者は寄生雑草の特徴的な発芽過程に着目し,寄生雑草固有の代謝経路を見出すべくメタボロミクスを行った.その結果,プランテオースという特徴的な三糖の代謝が寄生雑草の発芽に重要であることを見出した.さらに,この代謝経路を阻害するノジリマイシンは寄生雑草の発芽を選択的に抑制することが明らかとなった. 本研究では,プランテオース生合成酵素を同定するために,プランテオースが種子に含まれていることが既に報告されているトマトに注目した.種子一粒中のプランテオースの分析系を確立し,EMS 処理による変異誘発系統についてプランテオースを分析した.これまでに約 300 系統を解析し,3 系統で種子中のプランテオースが著しく減少していることを確認した.トマトの低プランテオース変異体の原因遺伝子を同定することで,プランテオースの生合成に関与する遺伝子を明らかに出来ると考えている. また,プランテオースの代謝酵素については,同時並行して進めていた次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析によってα-ガラクトシダーゼ様遺伝子の ORF を取得した.この配列を大腸菌で発現させたところ,モデル基質である 4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドの加水分解活性が確認できた.今後この酵素がプランテオースを基質とするかなどについて解析を進める. さらに,ノジリマイシンの作用機構を解明することを目的として,次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行った.その結果,ノジリマイシンの処理によって,糖の輸送体遺伝子や,受容体樣キナーゼ,あるいは,フォスファターゼの遺伝子の発現に変化が見られた.これらは,寄生雑草の発芽に重要な役割を担っていると予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに植物中でプランテオースの生合成に関わる酵素の同定はなされていない.そこで,プランテオースが種子に含まれていることが既に報告されているトマトに注目した.種子一粒中のプランテオースの分析系を確立し,EMS 処理による変異誘発系統についてプランテオースを分析した.これまでに約 300 系統を解析し,3 系統で種子中のプランテオースが著しく減少していることを確認した.また,興味深いことに,1 系統において,トマト種子に多く含まれるフルクトースがほとんど含まれていないことを発見した. プランテオースの代謝酵素については,同時並行して進めていた次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析によってα-ガラクトシダーゼ様遺伝子の ORF を取得した.この配列を大腸菌で発現させたところ,モデル基質である 4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドの加水分解活性が確認できた. ノジリマイシンの作用機構を解明することを目的として,次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行った.その結果,ノジリマイシンの処理によって,糖の輸送体遺伝子や,受容体樣キナーゼ,あるいは,フォスファターゼの遺伝子の発現に変化が見られた.これらは,寄生雑草の発芽に重要な役割を担っていることが予想される.
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Strategy for Future Research Activity |
トマトの低プランテオース変異体の原因遺伝子を同定することで,プランテオースの生合成に関与する遺伝子を明らかにする.また,低フルクトース変異体についても解析を行い,植物の中心代謝物であるフルクトースが低下していることに対する生理的影響を精査する.変異の同定には次世代シーケンサーを用いた MutMap 法を用いる.同定した変異より,プランテオース生合成酵素と予想される配列が取得できれば,その ORF の異種発現等による酵素活性の評価を行う. また,プランテオース代謝酵素に関して,引き続き得られている遺伝子の機能の解析を続ける.これらの遺伝子については,海外共同研究者らによって確立された寄生雑草の形質転換系を用いてノックダウンあるいはゲノム編集によるノックアウトを行い,寄生雑草中の機能解析も試みる. また,トランスクリプトーム解析によってノジリマイシンによって影響が現れた遺伝子については qRT-PCR による詳細な発現解析を行う.これまでにノジリマイシンによる発芽阻害はグルコースの同時投与によって抑制できることを発見している.この知見を用いて,ノジリマイシンとグルコースの同時投与時の各遺伝子の発現を解析することで,これら遺伝子が真に発芽に関与するかどうかを検討する.
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサーによる解析で 100 万円を計上していたが,これを行わなかったために次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については,トマトの変異解析のための次世代シーケンサーの外注として使用する.
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[Journal Article] Planteose as a storage carbohydrate required for early stage of germination of Orobanche minor and its metabolism as a possible target for selective control2015
Author(s)
Wakabayashi, T. Joseph, B., Yasumoto, S., Akashi, T., Aoki, T., Harada, K., Muranaka, S., Bamba, T., Fukusaki, E., Takeuchi, Y., Yoneyama, K., Muranaka, T., Sugimoto, Y., Okazawa, A.
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Journal Title
J. Exp. Bot.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Study on the effect of nojirimycin on sugar metabolism in germinating seeds for selective control of root parasitic weeds2014
Author(s)
Wakabayashi, T., Yasumoto, S., Akashi, T., Aoki, T., Sugimoto, Y., Ohta, D., Muranak, T., Okazawa, A.
Organizer
13th IUPAC International Congress of Pesticide Chemistry
Place of Presentation
San Francisco, USA
Year and Date
2014-08-10 – 2014-08-15