2015 Fiscal Year Research-status Report
生物酸化したメタン発酵消化液の養液利用が植物の窒素吸収利用効率に及ぼす影響の解析
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26520311
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10409146)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | メタン発酵 / 養液栽培 / 環境調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度の課題として,メタン発酵消化液の生物酸化によって生じる硝酸の増加に伴ってpHが低下し,これによって生物酸化活性が次第に低下するというものがあった。そこで,pH緩衝作用を持つ炭酸カルシウムの投入が,メタン発酵消化液の連続的生物酸化に及ぼす効果について検証した。炭酸カルシウムは安価で豊富に存在することに加え,pH緩衝においては必要量のみが溶存してそれ以外は不活性な沈殿物として存在する。沈澱が生じる程度の量の炭酸カルシウムを生物酸化槽に投入して,消化液の半連続生物酸化実験を行った。炭酸カルシウム投入によって生物酸化槽のpH低下は大きく緩和され,消化液投入負荷を対照区の2倍に高めても高い硝酸転換速度が維持された。生物酸化液の硝酸濃度は従来と同じ範囲(2000~2500mg / L)を保った。このことは,従来の手法の半分の反応槽サイズでも同量の改質消化液が得られることを意味している。一方で,pHが高く維持された結果,低pH下でイオン化し易いリンをはじめとする多価の無機イオン濃度が減少した。炭酸カルシウムの適切な施用条件を確立するために,次年度において多価イオンと硝酸イオンの植物利用の観点から解析を行う予定である。
メタン発酵消化液(消化液)および消化液を生物酸化した液(改質消化液)をキュウリ養液栽培の培養液に用いて,第一本葉展開後1週間の成長解析を行った。消化液および改質消化液は窒素濃度を基準としてそれぞれ希釈して用いた。キュウリの相対成長速度は,改質消化液を用いたものが消化液を用いたものに比べて3.72倍有意に大きかった。純同化速度,葉重あたりの葉面積,葉重量比はそれぞれ1.83倍,1.31倍,0.85倍であったことから,消化液による高アンモニア濃度障害が生物酸化によって大きく緩和された結果,葉の光合成能力,葉へのバイオマス分配ならびに展葉能力が回復したことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭酸カルシウム投入は当初予定していなかったアイデアであるが,このことによる生物酸化反応の安定化は研究計画以上の成果を収めた。一方,生物酸化実験に注力した結果,H27年度における改質消化液を用いた栽培実験の試験区設定は必要最低限のものとなった。ただしH27年度において,4種類の改質消化液を一度に生成できるバイオリアクター装置を構築し,さらに養液栽培のためのろ過装置も前倒しで導入できたため,次年度の計画である改質消化液の無機イオン組成が植物成長に及ぼす影響の解析について,効率よく解析できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
養液栽培に最適化されたメタン発酵消化液改質プロセスを構築し,投入バイオマス中の窒素がメタン発酵・生物酸化・植物成長を通してどのくらい資源として回収・吸収・利用できるか評価する。さらに環境影響や経済性についても考察することで,生産現場レベルでの将来的な実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
H27年度の計画通り,4種類の改質消化液を生成可能な実験装置を構築したが,装置の構成要素の一部を既存の製品を流用することができたことなどから,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記実験装置により多様な改質消化液を生成できるようになったため,次年度は養液栽培装置の拡大に当該助成金を主に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)