2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲーム意味論に基づく新しい論理体系の構築とその複雑さの解析
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26540001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 一之 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70188291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数理論理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ゲーム意味論の手法を用いて、高い表現力の形式体系を提案し、その記述力や複雑さに関する高次計算論(higher recursion)的な考察を行いながら、逆にその体系を用いて不完全情報ゲームやネットワーク推論の特性を考査するものである。初年度においては、必勝法が計算不可能で、勝利者もエフェクティブには決定できないゲームを定義する決定性プッシュダウンオートマトンの亜種が存在することを示し、その結果を証明論におけるWeiermannの相転移と比較し、決定問題の相転移現象として捉える見方を提唱した。本年度は、その考察を大きく発展させ、様々な受理条件を伴う非決定性プッシュダウンオートマトンによって定義されるゲームに対して、必勝法の計算不可能な度合いを逆数学的方法によって特定した。その結果は国際会議で発表し、また論文も準備中である。さらに、ゲーム木のランダム入力に対するクエリ複雑さに関する研究を進めた。ミニマックス定理を応用したYaoの原理は、どんな乱択アルゴリズムも最悪の入力分布に対しては決定性アルゴリズムの期待値よりも効率が良くならないことを示すもので、ランダム決定木のラスベガス複雑性を求める「SaksとWigdersonの予想」にも有力な解決手段を与えると思われる。特に各入力ビットに0,1 が割り振られる確率が独立である場合の複雑性について考察し成果を得た。また、量子決定木の複雑さを特定する研究に向けて,測定ベースの量子計算に関する研究も行った。最後に、グラフ上の確率混合戦略の複雑さをBlackwell ゲームの戦略の複雑さと比較しながらμ計算を使って分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な受理条件を伴う非決定性プッシュダウンオートマトンによって受理されるω言語のゲームに対して、必勝法の計算不可能な度合いを逆数学的方法によって特定するという新しい知見を得た。また、各端点の入力確率が独立である場合のゲーム木の複雑性について具体的な成果を得て発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度まで、ある種のゲームと計算モデルとの関係、ゲーム木に対する確率アルゴリズムなどを考察して成果を得たが、本年度はそれらの結果をさらに発展させるとともに比較検討し、高次計算論的関係に一般化させながら、不完全情報ゲームやネットワーク推論の分析に応用していく。
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Causes of Carryover |
ゲームの計算論的分析が予想以上に幅広く多角に進展し、また逆数学との繋がりという新たな視点も生まれて国際的な交流が広がったので論文を発表する機会が遅れたが、成果は着実に得られている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度内に国際会議での研究発表を複数回行うため、その旅費に差額を用いる。
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Research Products
(5 results)