2014 Fiscal Year Research-status Report
通信複雑性に対するブラインド量子計算による方法論の確立
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26540002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小柴 健史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60400800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子計算 / 暗号プロトコル / 暗号理論 / 通信計算量 / 代理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
Broadbent,Fitzsimons,Kashefi(2009)によって提案された量子ブラインド計算はクライアントとサーバ間の代理計算プロトコルであり,クライアントの情報をサーバには一切漏らさない.量子通信複雑さを議論するための枠組みとして量子ブラインド計算を活用することを新たなアイデアとし,これを一般化した概念について,従来方式と同様に安全性(秘匿性)があることを確認した.Broadbentらのオリジナルのプロトコルはサーバがクライアントからの要求に答えるのみの設定なのに対して,安全性を損なわずにサーバにも入力を持たせるように拡張することで,一般の暗号プロトコルへ適用できるようにした. また,この枠組みを応用することで,秘匿情報検索に応用した.具体的には,Groverアルゴリズムを構造的なデータベースに適用するというアルゴリズムを拡張量子ブラインド計算に適用するとことで,量子秘匿情報検索プロトコルを構築し,その通信計算量がO(polylog N)であることを導出した.この通信計算量は既存のプロトコルよりも効率的である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Broadbent,Fitzsimons,Kashefi(2009)によって提案された量子ブラインド計算はクライアントとサーバ間の代理計算プロトコルであり,クライアントの情報をサーバには一切漏らさない.このプロトコルはサーバはクライアントからの要求に答えるのみの設定なのに対して,安全性を損なわずにサーバにも入力を持たせるように拡張することで,一般の暗号プロトコルへ適用できるようにした.片側プライバシーを持つ暗号プロトコルの代表的な方式として秘匿情報検索(Private Information Retrieval)へ応用し通信計算量を議論することが主目的であり,この目標はほぼ達成された.また,安全性に関する議論については,汎用結合可能性を考慮するなど,今後の新たな展開の可能性も開くことができた.さらに,応用事例として秘匿情報検索だけではなく,安全な所属性判定問題など安全なクラウドコンピューティングの基礎技術に関しての適用可能性も検討できた.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に量子ブラインド計算プロトコルを拡張することで,量子通信計算量を議論できるような枠組みを与え,秘匿情報検索について適用を行い,既存結果を大きく改善する結果を得た.また,量子ブラインド計算の性質を用いることで,従来は個別に議論していた安全性を簡素化することができるようになった.この一般的枠組みの有効性を示すために,秘匿情報検索の他の適用例を検討することが重要であり,安全な所属性判定問題に関して行った基礎調査をより詳細に考察する.要素技術として量子Bloomフィルタと呼ばれる簡潔データ構造を新たに考案しているが,元々のBloomフィルタは実用的な確率的データ構造として実システムに広く活用されており,様々な変種が存在している.それらの変種に対して量子版を検討することで,拡張ブラインド計算プロトコルを用いた一般的枠組みに対して多くの応用例が見出されると期待でき,それらの量子通信計算量を検討する.
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Causes of Carryover |
研究成果は創出できたものの,その学術雑誌論文化という形までには至らず,投稿料などの費用が今年度は掛からなかった.そのための予算が10万円ほど残る形になった,これは研究期間を通じては必要な経費なので,次年度の経費として回すことにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では,拡張量子ブラインド計算の更なる応用,および,より強い安全性概念の達成などの研究を計画通り行う.それと合わせて,26年度で得られた研究成果を学術論文化するなどを行うが,その経費は繰り越した予算を利用して行う.
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