2015 Fiscal Year Research-status Report
マトロイドマイナー理論の新展開と量子情報処理の性能解析の融合研究
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26540004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 浩 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80183010)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルゴリズム理論 / 有向マトロイド / 量子コンピュータ / 量子計算 / 拡張複雑度 |
Outline of Annual Research Achievements |
現行のスパコンや高速通信の性能を凌駕する次世代モデルとして、量子コンピュータに対する注目が急激に高まっている。本研究メンバは、これまでにもこの次世代モデルの性能解析を進めると同時に、離散システム研究でマトロイドマイナー理論の計算・理論解析にも取り組み、新展開へとつながる得る予備的成果をあげてきた。 本研究課題では、これらの複数分野にまたがる研究を融合させた上で研究を推進した。量子情報面では測定ベース量子コンピュータの計算性能をマトロイドパラメタにより明らかにし、具体的に量子アニーリングで注目を浴びているIsingモデル分配関数計算において、マトロイド幅(ランク幅など)に基づくパラメタに関して現時点で最良のアルゴリズムを与えた。線形ランク幅に関係して、VLSI CADで成功をおさめているBDDとの関係を明らかにし、量子計算におけるBDDとしての操作を提示した。また、Isingモデルに関してさらにマトロイドマイナー理論の観点でパラメタによる特徴づけへとつなげる研究を進めている。有限体上の線形マトロイドに関するマトロイドマイナー定理が正しいとアナウンスされた点については、その外からアプローチする研究に取り組み、無限体の表現性や有向マトロイドに関係した有向化可能なクラスにおいて、マイナーに関して閉じている典型的なクラスで禁止マイナーが無限個構成できる特徴づけを与えた。 量子情報のBell不等式は、あるクラスのグラフのカット多面体のファセットであり、近年その拡張複雑度が解明されつつある。本研究では、マトロイドのクラスにおいて横断マトロイドがlower truncationして得られる豊かなものについて、それらが多項式オーダの拡張複雑度を持つことを著者らの過去の研究を発展させて示し、統一的な枠組みを示した。幾何構造から組合せ論への展開において集合間の擬距離性を示す成果も得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指した諸問題で目標とした特徴づけを与えるとともに、量子アニーリングに関連した展開も図り、量子情報におけるBell不等式に関する拡張複雑度問題をマトロイドの面から研究することができており、予想を上回る成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
年度途中から新たな研究協力者として代表者と同所属のVorapong Suppakitpaisarn助教の助力も得て、従来の研究計画を発展させて新たに得られた研究成果について集合間の擬距離性を示す論文を完成させ、その論文を年度をまたいで開催された国際会議において発表した際の海外出張旅費を支出しているため期間延長申請済であり、今後は上述の活動を通して得られた分も含めて研究成果全体をとりまとめる。
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Causes of Carryover |
本研究課題による研究成果を発表するために国際会議に論文を投稿し、採択されたが、会議開催期間が年度の境目にかかっていたため、旅費相当分を確保しておくために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果周知活動のための旅費として使用する
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