2014 Fiscal Year Research-status Report
複合待ち行列システムにおける柔軟性効果の数理的解明
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26540008
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮沢 政清 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80110948)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 並列待ち行列 / 確率論 / 客とサーバーの柔軟性 / サービス時間分布の効果 / 定常分布の漸近特性 / 多次元ランダムウォーク / 定常分布の重負荷近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は複数の種類の客が到着するサービスシステム(複合待ち行列と呼ぶ)において,サービス窓口が複数の種類の客に柔軟に対応したり,サービス係が互いに協力する効果を数量的に評価し,システム設計に役立てることである.当初の計画ではこのシステムを反射壁をもつ多次元ランダムウォークの境界面を使ってモデル化し,定常分布の漸近特性により評価する計画であった.計画に沿って定常方程式を導出した.しかし,このモデル化においてはランダムウォークを使うため基本的にサービス時間は指数分布,客の外部からの到着はポアソン過程に従う場合しか扱えない.海外の研究協力者(R.W. WolffとR. Righter)から客の柔軟性を見る上では,サービス時間分布の影響を見ることも重要であることが指摘された.ランダムウォークに背後過程を追加したマルコフ変調ランダムウォークを使って,この問題に対応することは原理的に可能であり,海外の研究協力者と研究を進めたが,モデルが複雑になり理論的に有用な結果を得ることは困難であった.そこで,問題点を洗い直し,初めから一般的な到着過程やサービス時間分布をもつ複合待ち行列モデルを考え,マルコフ過程により表現し,各待ち行列の大小関係で決まる境界面と適切なテスト関数を使って解析的に扱いやすい定常方程式を導くことにした.その第一歩として,待ち行列が1つで異なるサービス時間分布をもつ複数窓口サービスシステムについて,定常分布の裾の漸近特性を得ることができた.例えば,裾が重いサービス時間分布をもつ窓口は大きな待ち行列を減らすことに寄与しないことが理論的に確認できた.更にこの方法を使って,重負荷時における極限分布を求めることもできた(論文を執筆中).複数の待ち行列がある場合にこの方法を適用し,定常分布の裾の漸近特性と重負荷近似を求める研究を準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のモデル化では不十分なことが分かり,モデルを一般化し,研究方法を再検討した,この結果,従来の方法では解析が難しいことがわかった.このため,一時期研究に遅れが生じたが,その後.問題点を解消する新しい方法を考案し,当初の研究実施計画とは少し異なるが,順調に研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究中の方法は,状態空間を境界面で分割し適切なテスト関数を使って定常方程式から定常分布の漸近特性を得ることである.ここに,テスト関数とは,定常方程式を定常分布の期待値として表すときに使う関数である,例えば,テスト関数として指数関数を使うと積率母関数に関する定常方程式が得られる.当初の研究ではランダムウォークによるモデル化を考えたため.複数待ち行列の場合でも積率母関数による定常方程式から定常分布の漸近特性を導く方針であった.しかし,柔軟性効果を見るためには客の到着過程やサービス時間分布を一般化することが重要であり,積率母関数による定常方程式はきわめて複雑になる.このため解析が困難であった.そこで,前年度の研究では,漸近解析を可能とするようなテスト関数を探す研究を進め,待ち行列が1つで複数の窓口をもつ待ち行列システムに対して適切なテスト関数を見つけ,定常分布の漸近特性が得られることを確認した.この場合に,待ち行列モデルを区分的に確定的なマルコフ過程(PDMPと呼ぶ)により表し,境界条件と呼ばれる方程式を満たすテスト関数が役立つ.今後は,このPDMPによるモデル化を更に研究し,複数の待ち行列をもつ複合待ち行列に対して適切なテスト関数を選び漸近特性を導く研究を推進する.また,この漸近特性を使ってシステムの柔軟性の評価を行う.なお,複合待ち行列の場合には到着客が待ち行列を選ぶルールとサービスを完了した窓口が次の客をどの待ち行列から選ぶかを決めるルールが必要である.到着客が最小の待ち行列を選ぶなどの簡単ではあるが応用上重要なルールの場合から研究を進め,より複雑なルールの場合に研究を進めていく方針である.
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Research Products
(4 results)