2015 Fiscal Year Research-status Report
医薬品副作用大規模データベースの高度利用に向けた薬剤疫学と空間疫学の融合
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26540012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 邦彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50323259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 茂之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80305854)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 空間疫学 / 薬剤疫学 / シグナル検出 / 有害事象 / 自発報告 / 集積性検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤と有害反応の因果関係を検討するため,薬剤使用に伴う有害事象発生の自発報告データなどに基づくシグナル検出やそのリスクの定量的評価として,空間疫学での疾病集積性検定やリスク推定の方法論と融合した検討を実施している。 まず日本の医薬品医療機器総合機構で公開されている副作用自発報告データベースJADERと,米国FDAで公開されているAERSを詳細に調査し,報告されている事象や報告のされ方の違いについて比較を行った。また両データベースに対して,いくつかのシグナル検出の手法を適用し,検出されるシグナルや,その検出のされ方についても比較した。これらの結果からそれぞれのデータベースを薬剤疫学研究に利用する際の留意点などを明らかにすることができた。 次に経時的なデータから突発的なイベント発生を検出する点でシグナル検出と関連の大きい空間疫学研究における時間集積性の検出について方法論の検討を開始した。まず心肺機能停止傷病者救急搬送の日ごとの件数での解析を検討し,各年の年末年始に発生件数が急増していることを明からにした。さらにポアソン回帰モデルに基づく定量的なリスク評価方法を提案し,それを用いると調整リスク比は1.3~1.6倍と推定され,これは他の要因よりも大きな値となっていることが確かめられた。この成果をもとに,空間疫学における更なる方法論の拡張・提案ならびにデータベースを利用した薬剤疫学研究への適用について引き続き検討をすすめている。 これらの成果についてはそれぞれ国際的学術専門誌に研究論文として発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本および米国での大規模なデータベースを用いた比較を行い,その特徴を明らかにし,その成果を国際的な薬剤疫学分野の学術専門誌の研究論文として出版することができた。一方,空間疫学的側面での方法論の検討も開始し,その第一歩として時間集積性の検定とそこでのリスク評価の方法を提案し,救急搬送件数の大規模なデータに適用することができた。この成果についても当初の予定よりも早く,年度内に国際的な学術専門誌に論文出版することができ,さらにこの成果をもとに新たな方法論の開発の検討にも早めに着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をもとに,経時的なイベント発生報告データに対して,空間疫学的側面からの時間集積性の検定の新たな手法とリスク評価について方法論の開発を行い,その評価を行う。また,薬剤の利用および有害事象の発生に関するデータベースでの検討を引き続き行い,空間疫学・薬剤疫学の両面での検討と実データを用いた調査,解析を進める。
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Causes of Carryover |
論文が掲載された学術雑誌において,論文掲載費用が当初の予定よりも安く済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表のための学会(国際,国内)への旅費,ならびに論文校正・掲載料などの支出として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)