2014 Fiscal Year Research-status Report
匿名化が誘発する濡れ衣現象のモデル化と最適化による解消法
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26540041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 裕志 東京大学, 情報基盤センター, 教授 (20134893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 一誠 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (90610155)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プライバシー / 匿名化 / k-匿名化 / 主観確率 / アルゴリズム / 数理モデル / 濡れ衣 / プライバシー保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人の滞在場所情報を精密な1地点ではなく、ある程度の面積を持つ領域で表わし、その領域内に少なくともk人存在するようにすることによって、場所に関するk-匿名化が実現できる。しかし、k人の中に、問題のある場所、例えば消費者金融ショップにいた人がいたとき、そこにいなかった人も場所としては領域の中央点にいたと見なされるため、消費者金融ショップにいたことが疑われる。この現象をk-匿名化における濡れ衣という。濡れ衣現象は好ましくないため、これを起こりにくくする数理モデルおよびk-匿名化アルゴリズムの拡張を行った。濡れ衣を疑うことは主観的確率による。よって、主観的確率が生じる原因を明確にしなければならない。例えば、企業の採用担当者が応募者がいた場所の近くに消費者金融ショップがあったとき、濡れ衣を疑うべきかどうかは以下のモデルによる。すなわち、(1)この応募者を採用したとき、その人が消費者金融ショップに出入りするような人物で企業に与える損害の期待値を計算する。この損害の期待値はその領域にいたk人中、消費者金融ショップにいた人の人数に比例して増大する。一方、(2)この応募者を採用しなかった場合には、別の応募者を探すなどの手間と予算がかかる。(1)の費用が(2)の費用を上回った場合には経済的にみて応募者を疑うほうが合理的である。よって、濡れ衣現象の発生を避けるためには、領域内のk人中、消費者金融ショップにいた人数ができるだけ少なくなるように領域を構成することが重要である。本年度は、この数理モデルを明らかにし、領域内で問題のある場所にいた人数が最少の1名になるようなk-匿名化アルゴリズムを考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に沿って、濡れ衣現象が発生する数理モデルを主観確率を用いて定式化することに成功した。k-匿名化については種々のアルゴリズムを比較し、モンドリアン法を採用することにした。モンドリアン法を直接適用すると、内部にk人存在する領域において、問題ある場所に存在した人数が1名以上存在することがあり、濡れ衣現象を誘発しやすい。そこで、モンドリアン法で1度k-匿名化を行ったうえで、問題ある場所にいる人数が1名以上の場合は、複数例えば3個の隣接する領域を併合し、これを3個に再分割して領域内の問題ある場所にいた人数が1名となるようにする。もし、問題ある場所にいた人数が多く、領域当たり1名以下にできない場合は分割数を減らし、例えば2個にする。すると、問題ある場所にいた人数は同じだが、領域内の人数が1.5倍程度に増え、領域内である人が問題ある場所にいた確率は減少して、濡れ衣の発生確率を減らすことができる。このようなアルゴリズムの提案までできたので、おおむね計画通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、26年度に提案したアルゴリズムを実装して実験的評価を行う。この場合、濡れ衣の発生確率と情報の価値の関係を明らかにする。実験に使うデータはこの分野の研究でよく用いられるAdultデータセットにする。 濡れ衣は位置情報のk-匿名化以外の場合も発生する。特に応用範囲が広いのは、借金の金額などの数値データ、職業などのカテゴリー属性の場合である。26年度に開発した数理モデルとアルゴリズムをこれらの対象にも適用できるように拡張することを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究発表における会議参加費、旅費、および書籍代に使用した。ただし、平成26年度における研究成果をまとめた査読論文掲載料、海外での国際会議参加などは平成27年度に行うことになったため、平成27年度に使用することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
査読論文掲載料 200,000円、 英文校正費 200,000円、国内および海外における学会会議の参加費ないし旅費 1,200,000円、物品費250,000円に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)