2014 Fiscal Year Research-status Report
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26540059
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 健二 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50586021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動作主体感 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、北海道大学に導入されたfMRI装置における実験環境を整備するとともに、それを使った脳機能イメージングデータの収集と分析を行った。具体的には、まず道具のパントマイムという単純な動作課題を用い、その際の脳活動データを計測した。そして被験者が、どのパントマイム動作を行っているかをfMRIのマルチボクセル・パターン(デコーディング)方法で識別した。さらにその識別器(デコーダー)が右手・左手の違いを汎化してパントマイムの種類を判定可能か検証した。その結果、主に両側頭頂葉の活動パターンを使うことで、使用する手に対して不変な動作のデコーディングが可能である点が分かった。本結果は、脳機能イメージングを使って頭頂葉における不変な運動スキルの表象の存在を示唆するものである。またこの結果は、頭頂葉損傷で生じる道具使用の障害である観念運動失行の例とも一致すると言える。このような頭頂葉における効果器(手)とは独立した身体表象は、動作主体感等の身体意識の基盤となるものと考えられる。現在本成果について、論文準備中である。 さらに、本提案の要であるニューロフィードバックを実現するためのシステムとなる、fMRIのリアルタイム処理・提示経路を新たに導入した。具体的には、撮像中の脳機能データをほぼリアルタイムで別コンピュータに転送し、そのコンピュータ上で前処理と分析を行い、最後に結果をスキャナ内の被験者に視覚あるいは聴覚提示するというシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規に導入されたfMRI装置を用い、脳イメージングデータを使った運動デコーディング方法、およびニューロフィードバックのためのリアルタイム処理系の構築を実現できた点で、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度には、昨年度までの成果であるfMRIを使った動作のデコーディング手法、およびリアルタイムシステムを用いて、実際に動作主体感の操作的検証を実施する予定である。動作主体感は、自己が生成した運動意図あるいは運動指令情報と、受容した感覚フィードバック情報との間の随伴性や因果性に基づいて知覚されると考えられる。そこで本研究はまず、①動作主体感に相関のある脳活動、または脳部位間の結合性を特定する。すなわち主体感が強い時に高い脳活動、または脳部位間の結合性を特定する。次に、②その結合性の強さをニューロフィードバックで実験参加者本人にリアルタイムに呈示し、操作させることを試みる。さらにその結合性の変化によって、実態に参加者が感じる動作主体感が変化するかを検証することで、動作主体感を産み出す神経回路の操作的検証を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度は、新たなfMRI装置に対する実験環境の整備に時間を費やしたため、実験のためのfMRI装置使用料や被験者謝礼等が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
fMRI装置使用料や被験者謝礼といった実験のための経費として使用する予定である。
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