2014 Fiscal Year Research-status Report
数理パズル「タングラム」の問題解決過程の解明と教育応用への領域横断的取り組み
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26540060
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
中野 良樹 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (50310991)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 問題解決 / 洞察 / 数理パズル / 協同学習 / 計算科学 / 眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は数理パズル「タングラム」の洞察的問題解決を実験心理学の立場から検討するとともに、計算理論的アプローチによる解決プログラムの開発と、高等数学の創造教育への応用を目指す、領域横断的取組である。26年8月に申請者、計算科学の大槻氏、数学教育の新井氏の三者で研究会を開催し、以下の点を確認した。1、タングラムにおける制約の検討では、過去の実験結果と記録画像を再分析する。2、眼球運動の測定が可能になったため、計画1にある熟達化の実験に、計画2の眼球運動の測定を前倒しで組み込む。3、創造教育への応用を目指す上で、協同学習をテーマに導入する。4、解決プログラムは、ピースの数を減らした条件から始める。 1は、過去の未発表データに申請者がLinear mixed-effects modellingによる分析を実施中で、成果は27年7月の14th European Congress of Psychologyに発表予定である(登録済み)。2は、3種類のタングラム課題に同一の被験者が繰り返し取り組む実験を実施し、27年3月までに11名の参加者からデータを取得した。27年7月までにはさらに10名の実験を行う。3は、過去のデータと統合させる目的で26年8月に追加実験を行い、成果の一部は秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要第37号に掲載された(平成27年3月発行)。さらに、本実験データの一部はThe British Psychological Society, 32nd Cognitive Psychology Section Annual Conferenceにおいて発表予定である(登録済み)。4は、大槻氏がタングラムのピースを2~3個に限定した場合でのプログラムを完成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
眼球運動の測定は、実験環境の調整、解析プログラムの開発など技術的な課題がいくつか存在しており、27年度からの実施を計画していた。しかし、開発メーカーの協力でこうした問題が早期に解決し、26年度中に実験を軌道に乗せることができた。また、本助成を活用して実験者を雇用することで、27年度早々に第一段階の実験を終了する予定である。一方で、本計画で購入したソフトウェアを導入することで、過去に取得した実験データに対してより詳細なデータ抽出と分析を実施することができるようになった。この恩恵により、洞察過程を解明する鍵となる制約の変容について、新規に実験を行わなくとも過去の実験画像から新たに行動データを抽出し、より包括的な統計解析を実施、検討することができる。現在、分析は進行中で、27年中に国際学会での報告が可能である。これらの方法上の改善により、当初は計画にはなかったタングラムの協同学習へとテーマを拡張できた。これはタングラムを使用した学習場面を想定した実験であり、27年度中に検討する予定だった高等数学における創造性教育へのタングラムの活用の基礎研究となっている。過去に行った実験を組み込むことで迅速に成果へとつなげることができた。この研究をもとに、26年度中に査読付き論文1編の掲載が決定し、27年度中の国際学会での発表を計画している。また、計算理論からのタングラムの解決プログラムも部分的に完成しており、27年度中の論文化を計画している。 以上のように、本計画は実験の実施状況、テーマの広がり、成果の報告すべてにおいて当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の推進方策は以下の通りである。1、眼球運動を測定した実験データの解析とその成果報告。2、Linear mixed-effects modellingによるタングラムの解決過程の検討と、国際学会での報告。3、タングラムを使用した協同学習に関する研究の国際学会での報告。4、計算理論をもとに開発したタングラムの解決プログラムを発展させ、そのソフトウェアの解決過程とヒトが行う問題解決の特徴とを比較し、成果報告につなげる。
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Causes of Carryover |
14th European Congress of Psychologyへの発表登録と参加費の振り込みを26年度内に行い、その分を算入して予算を組んだが、学会自体は27年度の開催であるため、予算の使用は27年度になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は14th European Congress of Psychologyへの参加・発表、The British Psychological Society, 32nd Cognitive Psychology Section Annual Conferenceへの参加・発表、連携研究者との研究会の開催、行動コーディングソフトの追加購入等に予算を充てる。
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