2016 Fiscal Year Research-status Report
ノスタルジア感情の機能に関する記憶研究からの複合的アプローチ
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26540062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 潤 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70152931)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 記憶 / 意識 / ノスタルジア / なつかしさ / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジア感情というヒト特有と予想される感情機能との関連から,実験的手法によって明らかにしようとするものである. エピソード記憶はメンタルタイムトラベル(mental time travel)という用語に代表されるように,過去を再体験するかのごとく思い出すという想起意識(autonoetic conscioiusness)が重要であるが,ノスタルジア感情を強く有した場合に特にこの再体験感という特徴があらわれやすいと考えられる。 本年度は,個人的ノスタルジア感情が記憶判断以外に与える影響について検討を進めた。まずノスタルジア喚起が商品広告に対する評価へ与える影響を検討した。そこでは,広告商品の呈示にあわせてなつかしい音楽となつかしくない音楽を聴取することが,その後の商品の評価に影響を与えるかどうかを検討したところ,なつかしさを喚起した場合の方が魅力度が高まることが示されたが,商品購買行動そのものには影響が見られなかった。また,ノスタルジア喚起による道徳判断に対する影響に関する実験については,ノスタルジア喚起が義務論的判断を高める傾向が示されたが,追試研究を予定している。また,ノスタルジア喚起が詳細な過去の記憶を想起させることを考えると,視覚的詳細さが高まるためフォルスメモリが低下することを予想して実験を行ったが,逆の結果となった。仮説との違いを検討中である。 さらにノスタルジア喚起の心理的健康への影響研究が進行中であり,予備的結果としてeudaimonic wellbeingが高まる可能性が示された。 これらの成果は日本認知心理学会,Sarmac(Society for Applied Research in Memory and Cognition)第12回大会(シドニー)において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノスタルジア喚起がさまざまな心理判断に影響を与えることが明らかとなってきたが,確認実験および論文化を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を発表準備を行っており,平成29年度の学会発表,論文化を目指している。
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Causes of Carryover |
ノスタルジア喚起がさまざまな心理的判断に与える影響を検討する実験を行っているが,web実験を併用したため,予想より支出が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度実施予定の実験実施費用および参加者謝金として使用するとともに,他分野の研究者との交流や発表機会を増やす予定であり,その打ち合わせ等に使用する予定である.
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