2014 Fiscal Year Research-status Report
チンパンジー乳児の音列知覚機構からみたヒトらしさの解明
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26540066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
脇田 真清 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40301270)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チンパンジー / 音列知覚 / ブローカ野 / 弓状束 / 事象関連電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト成人では,弓状束による側頭皮質と下前頭皮質との連絡が音列処理には不可欠である。チンパンジーはヒトに最も近縁であるとされるが,弓状束は存在せず,ブローカ野に相同な皮質領野の存在も明らかでない。しかしヒト乳児では,この弓状束が未発達であるにもかかわらず連続する聴覚信号から規則的な音列を抽出できることが脳波研究で明らかにされている。つまり聴覚信号のオンラインでの分節化には弓状束やブローカ野の成熟は必須でないと考えられる。したがって,ヒト乳児同等の音列処理能力はチンパンジーにも備わっている可能性がある。そこで,本研究では,新生仔期のチンパンジーにおける音列処理能力の発達過程を調べることで、ヒト言語の霊長類学的起源あるいは、言語におけるヒトらしさの特徴を解明することを目的とした。 当初の計画では,Kudo et al. (2010)に用いられた刺激を用い,推移確率に基づいて,連続する聴覚信号からECC#やDF#A#などの音列を抽出できるかどうかを調べる予定であった。しかし,確率学習はヒト成人でも困難であり,チンパンジーを対象とすることに加え,電極を配置するための手続きなどを考慮すると,実験に費やせる時間が短い。そこで,Yoshida et al. (2010) に倣い,音列の規則を長-強・短-弱・短-弱(あるいは短-弱・短-弱・長-強)のパターンで構成した刺激の物理的特徴に基づいて聴覚信号を分節化できるよう刺激を変更した。受動的に反復提示する3音からなる規則的な音列のうち,特定の1音に対する事象関連電位が他の2音と比べて大きくなるのか,あるいはどの要素に対しても同じ大きさの電位が現れるのかを調べることとした。もし,各要素に対する反応強度に差が,時間の経過とともにその対比が現れるのであれば,その対比が物理的特徴ではなく分節化による刺激音列に対する注意を反映すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画の1年目では,動睡眠中のチンパンジー新生仔から音列刺激に対する事象関連電位を記録する予定であった。しかし,想定していたことではあるが,初年度ではチンパンジーが生まれなかったため,実際の記録には至らなかった。また,研究実施者の所属機関には脳波測定に馴致されたチンパンジーがいないため,成体での測定も行えなかった。一方で,実験装置や用いる刺激は完成しているため,実験動物が準備できれば研究を遂行することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
チンパンジーの妊娠期間・養育期間を考えると,次年度も研究実施者の所属機関では研究の実施が困難である。そこで,脳波測定に馴致された成体チンパンジーのいる他機関での実験を打診した。その機関の都合により初年度での実施はできなかったが,残りの研究期間で、記録を開始し,計画を完成させるべく研究を推進する。
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Causes of Carryover |
計画の1年目では,被験体とする予定のチンパンジーが生まれず,実際の脳波測定には至らなかった。そのため,実験の実施に必要な消耗品を購入する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,研究実施者の所属機関ではなく,脳波測定に馴致された成体チンパンジーのいる他機関で実験を行う。そのため,当該助成金は予定外に増えた国内旅費に充て,研究を遂行する。
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Research Products
(1 results)