2014 Fiscal Year Research-status Report
共起語ネットワークを用いた記憶の神経回路モデルの構築と検証
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26540069
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
佐藤 直行 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (70312668)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳 / 神経科学 / ニューラルネットワーク / 認知科学 / 視覚 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳内表現モデルとして大規模言語データベースに基づく単語共起ネットワークを導入し,長文読解時の記憶形成に関する連想記憶回路モデルの構築を行うことを目的とする。平成26年度は、共起語ネットワークの脳内表現への寄与を定量的に明らかにするため、8名の被験者から長文読解時(3000字×4編)の脳波及び視線の計測を行った。データ解析では、確率的言語モデルを用いて、被験者が読後に記述した長文の説明文と、読解した長文の各部分との相関を算出し、各部分を読解中の脳波パワーと比較した。結果では、眼球運動が起こる-400~0ミリ秒の区間で、のちに想起され易い部分の読解中には、前頭部から頭頂部のシータ帯域(4~8Hz)の脳波パワーが増大すること、また、眼球運動とは独立に、頭皮上の広い部位において、アルファ帯域(9~13Hz)の脳波パワーが減少することが明らかになった。これらの結果は、これまでの単語や画像の記憶研究と同様に、長文読解においてもシータ帯域とアルファ帯域の脳波パワーは、のちの想起の予測できることを示す。しかし、クロスバリデーションを用いて、同計測データから各個人の被験者の想起を予測すると、8名中3名のみの場合でのみ有意な予測が得られたことから、被験者全体の傾向があるにせよ、記憶関連の脳波信号の強さには個人差があることがわかった。また、脳波シータと脳波アルファには個人の予測能力にばらつきがあり、個人毎の周波数特徴を用いると予測能力が向上することが期待される。以上より、単語共起ネットワークは脳波信号に含まれる記憶関連成分を検知するのに役立つことから、記憶形成に関する脳内表現モデルとしても有効に働くことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画研究では、これまで報告されてきた単語や画像などの個別的な記憶のみならず、長文読解においても記憶関連の脳波信号を検出することが必須の要件だった。長文読解は、時間発展を伴い、かつ複雑な意味構造をもつため、関連脳波成分の検出は難しいと予期されたが、当初の計画どおり、平成26年度においてこれを解決した。長文読解時の記憶関連脳波の検出、および読解時の脳波信号に基づく想起予測に関する成果は、それぞれ国際学会で発表の予定で、学会での議論を受けてすぐに学術論文が投稿できるよう準備している。以上より、申請書に記載した研究の目的の達成度について、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、申請書に記載したとおり、共起ネットワーク表現を介した入力パターンに対する連想記憶モデルを構築し、実験被験者の想起を予測する。モデルは大脳皮質を表す入力層と、海馬を表す記憶層の2層より成る。被験者の読みの時系列に基づく入力層の活動を記憶層の連想記憶回路に貯蔵し、のち,モデルの想起パターンと被験者の想起を比較・解析する.脳波パワーの情報に加えて、読解中の記憶の時間発展、読み戻しなどの眼球運動のパターン、などが連想記憶回路に統合されることで、被験者の想起の予測能力の向上が期待でき、これにより共起ネットワークの脳内表現モデルとしての妥当性を示す。
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Research Products
(6 results)