2015 Fiscal Year Research-status Report
無意識な微小頭部運動は音空間感性知覚に影響を及ぼすか
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26540093
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20143034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
大谷 智子 東京藝術大学, 芸術情報センター, 助教 (40422406)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音像定位 / 多感覚知覚 / 運動知覚 / 聴覚ディスプレイ / マルチモーダル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,聴取者の微小な頭部運動が音空間の臨場感など単なる音像定位を超えた高度な感性情報に影響・効果を与える可能性を探るべく,音随報聴取時の聴取者の頭部の微小運動の様相と,感性情報との関連を明らかにし, 3次元聴覚ディスプレイの高度化の可能性を検討するものである。 前年度は,周波数スペクトルの異なる音源信号を長時間聴取する際の聴取者の自然な頭部運動を測定するための測定システムの構築を主眼とした。頭部運動を妨げることなく計測を可能とするため,既存の3次元位置センサのレシーバを頭部頭頂に設置し,提示する音源信号と同期して頭部運動を記録できるようにすることで,音源信号の時間特性や周波数特性などの特徴量と頭部運動の分析を可能とした。平成27年度は,前年度の準備に基づいて聴取者の頭部運動の長時間計測が可能な実験システムを構築し,以下の2条件により聴取実験を行った。(条件1)CDやDVDを自然な態度で聴取,視聴しているときの頭部運動。(条件2)聴取者に様々な方向から音を提示し,その方向を向くように指示したときの頭部運動。 実験結果から,条件1では10次程度の線形予測法を用いることにより,一見ランダムな頭部運動を高い精度で予測できることが示された。また,条件2では頭が大きく動いているときの運動は低次数の予測が必要であることが示された。 合わせて,聴取者の頭部が1度/秒以下と極めて低速の運動が固定点音源の音像定位弁別限に及ぼす影響についても検討を行った。実験の結果,頭部運動自体は音空間知覚の精度向上に寄与するものの,頭部運動中に関しては,音像定位弁別限が上昇することが明らかとなった。これは,耳入力の変化というよりも運動している意識により音空間の知覚精度が低下することを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は前年度の準備に基づいて予定の実験を,平成27年度で実施する実験で必要な測定機器を構築し,詳細な実験を行い,線形予測法を用いることにより高精度で頭部運動の予測が可能であることが示された。これは予想を超える成果であり,実験を担当した大学院生は複数の学術顕彰を受けた。この成果は,本研究が最終的に目指す頭部の微小運動と音空間の感性知覚との関連を分析する上での基礎・基盤となるものとなるばかりか,3次元聴覚ディスプレイの更なる高度化に直接つながる成果である。 なお,上記実験結果が思わぬものであったため,その解析に多大な時間を要し,一部の実験項目は,この予測法について更に検討し予測法の確立を目指し,それに基づいて行った方がより高い成果につながるとして,1年の研究期間延長を申請した。 以上を総合し,本研究はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,前年度に行った,自然な聴取環境と実験者の指示に基づく聴取者の頭部運動の長時間計測結果の解析を更に進め,予測法の確立を行う。その結果得られた頭部運動のモデルを頭部運動センシングシステムに適用し,頭部運動の先読み等を行うことでリアルタイムでの頭部運動センシングが可能となるようシステムの高度化を試みる。 なお,当初計画では頭部運動と音空間感性知覚について検討することとしていた。しかし,迫真性や臨場感等の音空間感性を構成する事象(イベント)の知覚には,音像の顕著性と注意が重要な要因であることが明らかになってきたため,これらの影響についても検討を進め,音の顕著性と注意を加味した頭部運動の分析を進める。 以上の結果に基づいて,頭部運動と音空間感性知覚の関連について考察を進め,解明を勧めていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究成果として,音聴取時の頭部運度を当初は予想できなかった高い精度で予測できることが明らかになり,これを更に追求することにより,より高い学術成果が得られると判断,1年の延長申請を行い認められた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
聴取実験に係る消耗品,実験補助謝金等として使用する。あわせて,研究成果の発表に必要な旅費,英文校閲費用,投稿料等として使用する。
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