2015 Fiscal Year Research-status Report
自閉症等コミュニケーション障害の多元測定と統計モデルによる測定・支援の研究
Project/Area Number |
26540117
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 哲 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (30263429)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩坂 英巳 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (70244712)
根來 秀樹 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (80336867)
サクリアニ サクティ 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (00395005)
戸田 智基 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (90403328) [Withdrawn]
Neubig Graham 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (70633428)
田中 宏季 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 研究員 (10757834)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | コミュニケーション測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コミュニケーションが苦手な児童をトレーニングする対話システムを作るため、精神科医および臨床心理士などにより使用されているソーシャルスキルトレーニングの枠組みを参考とした。「自動ソーシャルスキルトレーナ」と題して、ソーシャルスキルトレーニングの過程を人間とコンピュータのアバターとの対話によって自動化するシステムの開発を実現した。今年度は、従来の音声言語情報を認識しユーザにフィードバックを行うシステムに、画像情報を追加してマルチモーダル化した。自動ソーシャルスキルトレーナの設計は、ソーシャルスキルトレーニングの枠組みに沿っており、課題設定、モデリング、ロールプレイ、フィードバック、正の強化、宿題を含んでいる。ユーザが対話システム上の仮想的なアバターと音声対話していく中で、コミュニケーションスキルを訓練していく。 これまで課題設定として「上手に話を伝えるトレーニング」を対話システムに実装した。まずモデリングのステップでは、ユーザはあらかじめ収録した、上手に話を伝える人の動画を視聴し良い点を学習する。次にロールプレイとして、ユーザがアバターに向かって、1分間で「最近あった出来事」を伝える。その際、アバターは聞き役として頷きなどの反応をし、同時にユーザの音声と動画も収録する。収録したデータから、ユーザの言語•非言語情報(声の周波数や明瞭性、1分間の単語数、6文字以上の単語割合、笑顔の頻度など)を検出し、それを標準的なモデル(モデリングで使用した話者達)と比較して、良かった点と改善点をユーザに提示する。ユーザはフィードバックを見ることによって、自分の話の伝え方について客観的なアドバイスを受けることが可能になる。今年度は、マルチモーダル化したシステムの評価を大学院生18名が行い、有意な訓練効果を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)おおむね順調に進展しているといえる。ソーシャルスキルトレーニングに関しての枠組み(課題設定、モデリング、ロールプレイ、フィードバック、正の強化、宿題)を参考にして、対話システムをマルチモーダル化することが実現できた。コミュニケーションスキルの訓練効果を測定するに当たって、本学倫理員会での承認の上、大学院生を計18名募集し実験を進めた。本システムを使うことにより、従来の音声言語のみのフィードバックよりと比較し、有意にソーシャルスキルが改善したことがわかった。これらの成果は、SST普及協会全国大会などで報告され、ベストプレゼンテーション賞を受賞するなど高い評価を受けている。また国際会議および学術雑誌への投稿を行い、現在査読中である。 しかし、より対話的なシステムを開発するに当たって、当初の予定であるコミュニケーションデータを収集し、そこから自閉スペクトラム症者と健常者の対人コミュニケーションにおける応答をモデル化することにはまだ至っていない。現在パイロット実験として、2名の自閉スペクトラム症者・児のデータ収録を行い、本システムが十分に使用できることを確認しているが、次年度は、さらに臨床データによるコミュニケーションモデルに基づいた対話システム作成に関して取り組む必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず実際のコミュニケーションデータを収録することを進めていく。現段階では、診断のない大学院生を研究協力者として募集しているため、実際に診断をもつ児童を募集していく必要がある。これにより自閉スペクトラム症に特化したシステムの効果測定、診断補助に向けたモデルの高度化、および教育の方向性策定が可能になってくる。以上のことを踏まえ、研究分担者と連携し「奈良教育大学 特別支援教育研究センター」および「きょうこころのクリニック」において、研究協力のお願い、および研究実施を進めていく。具体的には、年齢と性別がマッチした、知的障がいのない自閉スペクトラム症および健常群(各12名)を募集することを目指している。本データを収集することにより、コミュニケーションスキル測定に当たってどの点で差異が生じるかを明らかにし、医師診断や臨床現場などに幅広く知見を広め、多分野での議論を進めていくことが可能になる。また、本データの内容を応用し、「自動ソーシャルスキルトレーナ」の課題設定を拡張し、iPadで常時持ち運びの上、訓練できるようにしていく。これに関しては、研究分担者がプロトタイプを開発した上、アバターのデザインなど最終システムを外部発注する予定である。 また、これまでに実施した脳活動計測における研究についても継続して進めていき、脳全体を観察した客観的な訓練効果測定を実現していく。
|
Causes of Carryover |
関西近郊での学会が多く、わずかではあるが旅費の支出を抑えることができたため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
システムの精度を上げるべくさらに評価実験を進めるために、実験謝金等に使用する。また、当該分野における最先端の情報をするため積極的に研究会にも出席する。
|
Research Products
(5 results)