2014 Fiscal Year Research-status Report
脳神経ネットワークの機能分化に関する情報数理モデル
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26540123
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 裕 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80507236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10207384)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機能分化 / 伝送エントロピー / 数理モデル / 結合振動子 / 変分原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳新皮質の機能モジュールへの分化の原理解明を目指し、脳においてヘテロな構造が発達する進化と発達ダイナミクスの過程を計算論的な観点から再構成するため、本年度は双方向の情報量伝搬最大化原理に基づいて数理モデルを進化させる数値実験を行い、ネットワークの進化の過程を同期・非同期ダイナミックスの変化の観点、または適応度のランドスケープの観点から詳細に解析した。サブネットワーク間に相互に伝達される情報量を最大化するように振動子ネットワークを発展させると、2つの異なったモジュール構造が出現し、それぞれが異なった構造に分化することが確認できた。また、最適なネットワークは、パラメータ空間においてネットワークに集団的な運動が現れる境界付近に存在することがわかった。これらの結果は情報理論的な観点から導出される変分原理が、ネットワークにおけるヘテロ構造の形成原理として作用する可能性を示唆している。 もうひとつ課題としている、興奮型ならびに振動型関数形からなる力学系のネットワークにおいて、ニューロンのような興奮性や振動を示す素子がいかに生成されるかを研究する課題においては、さまざまな関数をダイナミックスとして持つ素子のネットワークを遺伝アルゴリズムによって進化させる数値実験を行った。環境要因を表すパラメータの値を変化させることにより、興奮性により情報を伝えるネットワークや、振動により情報を伝えるネットワークが生成されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
双方向情報伝達最大化に基づく機能分化の数理モデルの研究が順調に進み、初年度に論文として成果を発表できたため、当初計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平均場近似などの手法を用いてネットワーク状態量の発展方程式を導出し、進化的アルゴリズムの結果として得られたネットワーク状態量に関する数値計算結果と比較、検討する。さらに、相互作用ダイナミクスと伝送エントロピーの関係を定量的に明らかにすることで、機能分化に潜む情報のダイナミクスと構造を明らかにする。 ネットワークを進化させるための拘束条件として、感覚運動系などをモデル化した具体的な課題を準備し、進化に伴いネットワーク内部に分化やモジュール形成が起こる条件を解明する。分化に伴い情報の流れがどのように変化するかを解析する。 興奮・振動型関数系から成るネットワークの進化課題については、ノイズの環境下での進化を解析し、今年度発見した原理の一般化を目指す。 次のステップにつなげるために、数理モデルで解析した機能分化を可能にするシステムパラメーターによって培養細胞のシステムパラメーターを制御できるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
数値計算機を予定よりも安価に調達できたことに加え、後期に代表者の所属機関変更に伴い、研究計画の変更が生じ、旅費や人件費の費用が結果として減少したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度については、6月に中国で予定されている国際会議での成果発表に要する旅費(2名分)、国内での打ち合わせ会議のための旅費、データ解析用ノートPC購入の物品費に重点的に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)