2014 Fiscal Year Research-status Report
進化型多数目的最適化における解集合評価の体系化へ向けた評価指標の批判的考察
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26540128
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石渕 久生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60193356)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 進化計算 / 多目的最適化 / 多数目的最適化 / 非劣解集合 / 解集合評価 / 性能評価尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化型多目的最適化では,多目的最適化問題のパレートフロントを近似する非劣解集合が得られる.そのため,進化型多目的最適化アルゴリズムの性能は,獲得された非劣解集合により評価される.2目的最適化問題では,獲得された非劣解集合を2次元目的関数空間内に図示することができるので,視覚的に個々の非劣解集合を評価することが可能である.また,様々な評価指標による評価値と非劣解集合との関係も容易に理解できる.しかし,目的関数の数が4以上である多数目的最適化問題では,獲得された解集合を目的関数区間に図示することは不可能である.さらに,解集合に優越される部分空間の体積の計算も複雑なものとなり,解集合の評価に使うことができる評価指標が限定される.進化型多数目的最適化の分野では,現在,IGDと呼ばれる距離に基づく評価指標が幅広く用いられている.そこで,本年度は,IGDの問題点に焦点を絞った考察を行った.この評価指標の問題点として,まず,IGDによる非劣解集合の性能評価結果が参照解集合の設定に大きく依存することを示した.具体的には,IGDにより非劣解集合AとBを比較するとき,参照解集合の設定により,AとBの評価結果に逆転が起きることを明らかにした(国際会議SSCI 2014での発表内容).さらに,AがBより優れた解集合であることがパレート優越関係から明らかな場合でも,IGDによりBがAよりも高く評価される可能性があることを簡単な例題により示した.この問題に対しては,そのようなIGDが持つ不整合性を解消するための方法として,IGD+という性能評価指標を提案した(国際会議EMO 2015での発表内容).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書における平成26年度の研究目的は,以下の2項目であった. (1) 進化型多数目的最適化に関する文献を調査し,性能評価に用いられている解集合評価指標を網羅的に列挙する. (2) また,性能評価指標の妥当性を検討するため,多数の目的関数を持つテスト問題を作成し,目的関数空間内でのトレードオフ曲面の形状およびパレート最適解の数を調べる. このように,文献調査および文献調査で得られた性能評価指標の検討を初年度の研究目的としていた.文献調査の結果,目的関数の数が10を超えるような多数目的最適化問題に対しては,IGDという解集合評価指標が多くの論文で用いられていることが明らかになり,IGDに焦点を絞った研究を進めた.IGDに関連した文献調査をさらに行い,その性質を調べた結果,上述のように,IGDの持つ二つの問題点を明確に示すことのできる例題および数値実験結果が得られた.このような研究成果は,研究が概ね順調に進展していると言える十分なものである.さらに,本研究では,パレート優越関係と矛盾した結果が得られることがあるというIGDの持つ問題点を解消するために,IGD+という評価指標を提案し,パレート優越関係と矛盾することがないことを数学的に証明した.この研究成果を,平成27年3月に開催された進化型多目的最適化に関する国際会議EMO 2015で発表した.このように,文献調査および既存の性能評価指標の妥当性検討という研究目標を超えた新しい指標の提案と国際会議での発表まで行うことができたので,当初の計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
目的関数の数が10を超えるような多数目的最適化問題に対する非劣解集合の評価では,目的関数の数が2や3の場合で用いられている優越領域のサイズ(面積や体積,4目的以上の場合では超体積)に基づく評価指標の利用は困難である.そのため,獲得された非劣解解集合とパレート最適解集合との距離に基づく評価指標の利用は最も妥当な選択であると思われる.距離に基づく評価指標としては,GDとIGDが代表的なものであり,これらの指標を組み合わせた指標が用いられることもある.上述のように,平成27年度の研究成果として,IGDを修正したIGD+を提案した.この提案は,国際会議で大きな注目を集めた.しかし,簡単な例題に対する比較およびパレート優越関係との整合性という観点からの理論的な比較だけでは,十分にIGD+の有用性を示すことができていないという指摘も受けた.そこで,様々な多数目的最適化問題に対して得られた非劣解集合の性能評価をIGDとIGD+の両方で行うことで,IGD+の有用性を具体的に明確に示すことが今後の研究課題となる.特に,進化型多目的最適化アルゴリズムの比較にどのような影響を与えるかを明確に示すことが重要である.また,獲得された解とパレート最適解の間の距離として,ユークリッド距離以外の距離を用いた場合での評価指標に関する検討も重要である.さらに,優越領域のサイズの近似計算に基づく評価尺度とIGDおよびIGD+との比較も重要な研究課題である.最終的には,多数目的最適化問題に対する非劣解集合の評価のために推奨できる妥当性が高く計算量の少ない評価尺度を新しく提案することを試みる.IGD+の提案は,そのような最終目的に向けた大きな成果である.
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Causes of Carryover |
2015年7月に開催される国際会議GECCO 2015の参加登録費700ユーロの支払を3月に行う予定であった.しかし,この国際会議によるオンライン参加登録システムの準備が遅れた結果,参加登録の時期が大きく延期され,参加登録費の支払いが4月になったので,700ユーロに近い約9万円が次年度使用額として残った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のように,約9万円の次年度使用額が生じた原因は,国際会議参加費支払が3月ではなく4月になった結果であり,既に,国際会議参加費700ドルを4月に支払っている.
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