2015 Fiscal Year Research-status Report
2次元光双安定素子を用いたソリッドステートナチュラルコンピューティング
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26540129
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
礒島 隆史 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 専任研究員 (40271522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光双安定素子 / 波面伝播 / ポジティブフィードバック / 相転移 / 熱拡散方程式 / 有限要素法 / 迷路探索 / 時空間パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来のナチュラルコンピューティングの実験的実装における問題を解消しうる新規媒体として、光と熱による固体素子の状態変化に基づく「ソリッドステートナチュラルコンピューティング」を提案する。2次元的な広がりを持った光双安定素子における2状態間の遷移領域の空間的伝播(波面伝播)を用いて、理論と実験によって波面伝播ならびにそれを用いた迷路探索などのナチュラルコンピューティング動作を実証することを目的とする。また外部フィードバック系と組み合わせることで生物の神経系と同様のパルス伝播やカオスの発生といった機能の実現を目指す。 第2年度である本年度は、パターン光照射実験系の構築を行い、アクリル板セルと液晶5CB(4-cyano-4’-pentylbiphenyl)を用いた試作素子で波面伝播実験を行った。波面伝播速度は約0.08mm/sと有限要素法によるシミュレーションの値と概ね一致することが明らかとなった。また素子構造と時空間応答特性の関係を数値シミュレーションにより検討した。 さらに、外部フィードバック制御による高機能化の試みとして、神経細胞における不応期(神経細胞が発火したのちしばらく外部からの信号に応答しなくなる期間)にヒントを得た不応性フィードバック(On状態への遷移をカメラによって検出したら外部入射バイアス光をしばらくの期間十分弱くすることでOff状態へ引き戻す)によるパルスの発生伝播の検討を行なった。数値シミュレーションの結果、パルス的なOn領域の伝播が可能であることが確認できた。さらに遅延フィードバックによるカオス的挙動の誘起の検討を行い、フィードバックパラメータによって時空間的な不規則性を示す準周期的な振動が見られることが、数値シミュレーションにより判明した。これらのシミュレーション結果を実験的に検証するため、パターン光照射実験系の改装を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、初年度研究計画の積み残しとなっていたパターン光照射実験系構築とそれを用いた実験から取り掛かったため、その分今年度当初計画事項の実施が後ろ倒しとなった。その結果、フィードバックを用いた系と素子による実験的検証の一部が年度内には未了となった。またレーザー光源を用いたパターン照射実験系の構築については、使用する現有レーザー光源およびその実験環境の他のユーザーとの調停に手間取ったため、今年度中に取り掛かることができなかった。しかしながらこの問題はすでに解決し、最終年度(平成28年度)には当該実験環境を専有できることとなったため、実験系構築に早期に取り掛かることができる見込みである。 このような状況を鑑み、達成度区分としては「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成28年度)は、まず第2年度(今年度)に未了の不応性フィードバックによるパルス伝播の実験的検証を行う。また遅延フィードバックによるカオス的時空間不安定性についても、実験的検討を進めるとともに数値シミュレーションの結果についても得られた時空間不安定性のカオス性をリャプノフ指数などを用いて検証する。不応性フィードバック機構を組み込んだハイブリッド型パルス伝播素子の試作と動作検証を試みる。 さらに、熱伝導-ファブリペロー共振器型素子の実験に用いるレーザー光源を用いたパターン照射実験系を構築する。熱伝導-ファブリペロー共振器型素子の理論シミュレーションならびに試作と動作検証までを実施する。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】(「(3)やや遅れている。」)で記したように、今年度はレーザー光源を用いたパターン照射実験系の構築に取り掛かることができなかったために、これに関連した物品の調達が行えなかったことが、未使用額が生じた主たる原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、レーザー光源を用いたパターン照射実験系の構築を含め、当初研究計画の内容は全て実施するため、次年度使用額は当初計画通り使用する予定である。
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Research Products
(5 results)