2015 Fiscal Year Research-status Report
「笑い」を通じた人間とロボットの社会的インタラクションの実現
Project/Area Number |
26540137
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高西 淳夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50179462)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒューマノイドロボット / ヒューマンロボットインタラクション / 笑い / 手首 / 動作生成 / 誇張 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人間との笑いを通じた円滑な社会的インタラクションの実現を目的としている.研究第2年度である平成27年度には以下の2点について研究を推進した. 1点目は笑い誘発に有効な誇張表現に対応した広可動域・高速動作を兼ね備えた手首機構の開発である.まず,お笑い芸人のねたと人間の関節の仕様から,要求仕様を設定した.この結果,速度に関してはPitch,Roll軸周りに320deg/s,Yaw軸周りに360deg/sの高速動作が要求されること,可動角に関してはRoll軸周りに±85deg,Yaw軸周りに±180degの広い可動角が求められることがわかった.手首のRoll軸とPitch軸にはアクチュエータや減速機の重量物を腕の根元側に集中して配置できるパラレルリンク機構を採用し,610gという軽量な手首を開発した.さらに,この手首部を搭載するため前年度までに開発したロボットの鎖骨部・上腕部を改良した.前年度に開発したロボット腕部はアクチュエータ配置の問題によって鎖骨のリンク長が人間と比べ長すぎる問題があった.これが腕部全体の慣性モーメントを肥大化させ,手首部を含む前腕部の可搬重量を制約する要因となっていた.特に鎖骨付け根部のアクチュエータ配置の再検討により,手首部を含む腕部全体の高速動作を可能とした.さらに,ロボット胴体部の外装の面積を広げ,鎖骨を覆う形とした.さらに,外装上にディスプレイを搭載した.このディスプレイは主にロボットの心理状態を可視化するために使用することを予定しており,ロボットの全身動作の誇張,全身動作と矛盾する表現の表示などにより人間の笑い誘発への活用が期待できる. 2点目は被験者の笑い反応を計測するセンサの最適化である.前年度までに取得した被験者の笑い反応を解析した結果,被験者の反応を計測する筋電センサ・姿勢角センサの数を絞り込むことができることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「笑い」を通じた人間とロボットのインタラクションの実現を目的としている.本年度の研究では以下の2点に関し研究を推進した. それぞれ,1点目の手首部の開発に関してはお笑い芸人の動作の解析から要求仕様を算出,この結果に基づきRoll軸,Pitch軸に回転型パラレルリンク機構を採用することで広可動域・高速動作を両立しながら,軽量なハードウェアの開発を実現させた.当初予定に加え,この手首を搭載できるよう前年度に開発したロボットの鎖骨部・上腕部を改良した.さらに,ロボット胴体にディスプレイを搭載した. 2点目の笑い反応を計測するセンサの最適化に関しては,前年度までのシステムで取得した実験データの解析から,センサ数の絞込みが実現できることを示した. 以上のように,本年度の研究では交付申請時の目標をおおむね順調に達成したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である平成28年度には以下の3点について研究を推進する. 1点目は人間の笑い誘発のための全身動作に対応したロボット手部の開発である.本研究を通じ,肩付け根から手首までの広可動域・高速動作を両立したハードウェアを開発した.一方,手部は未開発である.開発に当たっては,まず人間の手で表現可能なジェスチャ表現を網羅的に実現できることを考慮して手部の自由度数を決定する.さらに,お笑い芸人のねた,人間の動作の解析から指部に必要な動作速度・可動角の要求仕様を算出する.ここで手部は腕部のうち最も先端に位置するため特に重量の制限が厳しくなる.したがって,誇張表現と軽量化を実現したハードウェアを新規に開発する. 2点目は表現内容はそのままにロボットの動作を「誇張」するアルゴリズムの構築である.これまでの実験において動作の「速度」や「大きさ」を誇張する表現の有用性が示された.ロボットが人間とのインタラクション中に動的に変化する状況に応じ自動的に動作を「誇張」して表現するため,平成28年度の研究ではロボットの表現の意図・内容はそのままに動作のみを誇張して表現するアルゴリズムを実現させる.具体的には,ロボットの手先位置の軌道を延長したり,速度パターンに抑揚を持たせることにより,手先軌道を「誇張」した表現を実現させる. 3点目は人間とのインタラクションを通じた評価実験である.本研究を通じ,人間の笑い誘発のために有用な誇張表現が可能なハードウェア,「誇張」や「状況との矛盾」などの特徴を持たせることで,ロボットの面白い行動・動作を実現させるアルゴリズムを構築してきた.これらを統合することで,人間から受けた刺激に対し,ロボットが「誇張」・「矛盾」した面白い反応を生成し,これを開発したハードウェアにより表現するシステムを実現し,印象調査により本研究全体の評価を行う.
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Causes of Carryover |
当初の予定では開発の効率を上昇させるため第2年度に第3年度で開発する予定のロボットの手部ハードウェア開発のためのアクチュエータをあらかじめ購入しておく予定であったが,アクチュエータの納期が予想以上に短いことがわかったため,計画を変更したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り,ロボット手部開発のためのアクチュエータ購入に使用する.
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Research Products
(2 results)