2014 Fiscal Year Research-status Report
「呼吸-姿勢」引き込み制御は睡眠の質を向上させストレス・ホルモンを調整できるか?
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26540142
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
野村 収作 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362911)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 引き込み現象 / アンビエント・フィードバック・システム / 感性生理学 / 感性情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自律呼吸に同調して僅かに姿勢を変化させる、独自の「呼吸-姿勢」制御システムにより、睡眠中の被験者の自律呼吸を制御しうるか否かを検証するものである。更に、この特殊なフィードバック系による自律呼吸への介入により、生理的には自律・中枢神経系(脳波・心拍動等)のみならず内分泌系(ホルモンの分泌)まで影響が及ぶか否かを検証するものである。 人間は背を反らすと息を吸い易くなるが、逆に息を吐くのは難しくなる。反対に、背を丸めると呼気は容易になるが、吸気抵抗は増す。この単純な事実は、姿勢による呼吸制御の可能性を示している。これは、生理的には肺の力学センサ(伸展受容器)による呼吸調整機序によるものである。本研究では背中に配置したエアチャンバ―を、呼吸と同調的に膨縮させることによって、この伸展受容器を刺激し、迷走神経を介して人間の自律呼吸に介入する。 同システムは呼吸センサと空気ポンプの動作をソフトウェア・インタフェースによりフィードバック制御するものである。フィードバックのアルゴリズム設計においては、いわゆる「引き込み制御」を実現するために、呼吸に同調的にただし適当な位相差を保ちつつエアチャンバを膨縮させる。これにより、外的に深呼吸状態に引き込むことが期待される。 同システムの介入効果を評価するため、中枢・自律神経系指標(電気生体情報)およびホルモン等生化学物質の分泌を定量評価する。とりわけ、ストレス・ホルモンであるコルチゾールをはじめ生理的背景の異なる8種類の物質を分析し、全身的な生理介入効果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「呼吸-姿勢」引き込み制御のシステム構築と予備実験を実施した。予備実験において、呼吸センサを接触式の圧力センサによるものから、サーミスタによる非接触方式に変更した。また、フィードバックのアルゴリズムを改善するために、20名による短時間介入試験を2回実施した。その結果、同システムにおいて課題であった個人差に基づく物理的な介入強度のばらつきに対し、スパイロメーター等による物理的換気量の測定に基づくエアチャンバのキャリブレーション(初期圧力および配置)方法を確立した。予備実験の結果、同システムによる介入により、事前に期待した通り呼吸の伸張が観察されたが、同時に介入終了後にもその影響が持続することが示唆された。このことについては当初想定していなかった新規の成果であるため翌年度の介入効果の生理的検証のための評価プロトコルを再検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度前半は、本年度実施した短期介入試験の効果について生体情報データを分析し、同システムの生理的効果について分析し、更に個々人による効果の相違についても層別分析により抽出する。年度後半は、同システムの生理効果に対しての分析結果に基づき仮説を再構築し、より長時間にわたる終夜実験により同システムによる睡眠前後の介入効果について検証する。その際、脳・中枢神経系および自律神経系を評価するためPSG(ポリソムノグラフィー)を導入し、また独自のシステムによって睡眠中に連続採取した唾液からホルモン等生化学物質の分泌を定量評価する。とりわけ、ストレス・ホルモンであるコルチゾールをはじめ生理的背景の異なる8種類の物質を分析し、全身的な生理介入効果を検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は既存機器を用いた予備実験を当初計画より拡充して行った為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホルモン定量分析にかかる消耗品・試薬・必要機器を購入する。
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