2014 Fiscal Year Research-status Report
新感覚の萌芽-「空気覚」の創造とその心理・生理的影響-
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26540147
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Research Institution | Institute of Technologists |
Principal Investigator |
三井 実 ものつくり大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70535377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 昭雄 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (70348465)
石川 智治 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90343186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新しい感覚 / 空気覚 / 空気流発生装置 / 生体情報処理 / 体性感覚 / 主観評価実験 / 反応モデル / 感性モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは,新しい感覚「空気覚」の開発および定義を行う.すなわち可聴周波数以下の空気振動,直流状,インパルス状の空気流といった各種空気流発生装置の構築を行う.次に,この装置で人間を刺激し,新しい感覚の絶対閾と弁別閾を調べることで,空気覚の解像度が判明する.更に生体計測実験および,感性評価実験を行う.これにより心理・生理の関係及び反応モデル・感性モデルの構築を行い,空気覚に対する人間の反応の仕組みを解明する. その中で,平成26年度は空気流発生装置の開発を行った.特にインパルス空気流発生装置の開発に成功した.その構成を以下に示す.信号発生器から約0.2Hzの矩形波を発生させる.これをDCアンプに入力し5つのスピーカをドライブする.5つのスピーカは6面の立方体の5面に設置し,残りの1面からノズルを介して,渦輪状のインパルス空気流を発生させる.さらに,開発した装置の評価を行った.立方体の体積を3種類,ノズル形状を3種類用意し,それぞれに同一の信号(0.2Hzの矩形波)を入力し,その圧力変化をマイクで測定した.その結果,発生した空気流が一番遠くまで減衰しない条件を実験的に求めた.これらの結果を日本感性工学会(2014年11月)にて発表した. また,現在,空気流発生装置に使用しているのはダイナミックスピーカである.つまり大きな空気流を発生させるとき,大電力を消費することが問題である.そこで省電力の圧電振動素子をユニットとして代替するため基礎実験を行った.圧電振動素子は高域周波数特性が良いが,低域で減衰してしまう.そのためクッション性のあるシートに素子を挟み込んでドライブし,低域特性を改善した.さらに条件の最適値も実験的に求めた.これらの結果は日本感性工学会(2015年3月)で発表した. 装置開発と評価まで進んでおり,27年度予定の主観評価実験が行える環境が整った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における平成26年度の予定としては,「単一空気流発生装置の開発と評価」,「複合的空気流発生装置の開発と評価の開始」「開発した単一吸気流発生装置による主観評価実験の開始」が目標であった. 前項目で述べたように,平成26年度には「インパルス空気流発生装置の開発と評価」.「試作したインパルス発生装置の改善」などを達成している.さらにこれらの内容に関して日本感性工学会での発表を行っている. 昨年度の3月より,主観評価実験のパラメータの検討を行い,実験方法を決定している.さらに平成27年5月現在,すでに主観評価実験が始まっている.また,複合的空気流発生装置もすでに試作段階に入っている. 以上より,当初の予定より1か月ほどの遅れはあるものの,研究の進捗状況はおおむね順調であると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書における平成27年度の予定は,「複合的な空気流を発生させる装置の開発および評価」,「単一の空気流発生時における主観評価実験および生体情報計測」や「単一空気流発生装置による感性評価実験」であった.前項でも述べた通り,おおむね順調に進んでいることから,今後も予定通り進めていく.詳細は以下のとおりである. 複合空気流発生装置に関して,超低域周波数を再生可能なシステムを試作中である.具体的には,約1m立方の箱の5面に口径が50~70cmほどのスピーカユニットを配置し,のこりの1面からノズルを介して空気流を発生させる.構造的には前年度に開発したインパルス空気流発生装置と似ているが,サイズが違うため,必要な条件を調整する必要がある.また,直流状空気流発生装置に関しては,現在,2種類の開発案があるため,試作して検討中である.それらは「扇風機に似た構造を持つ方式」と,「インパルス空気流発生装置に共振周波数を入力する方式」の2種類である.これらを複合的に刺激提示できるようなシステムを8月頃に完成させる予定である.さらにはスピーカユニットを圧電振動素子に代替する方法も確立し,空気流発生装置の完成度を高めたい. 主観評価に関して,空気流発生装置による圧力変動の値を変化させ,その時の被験者の反応を記録してもらう実験を行っている.これにより,空気変動量と人間の空気変動に対する感覚の関係性が判明する.さらには刺激を受けた時「どのように感じたか?」を体感に近い形容詞を用いて実験することにより,感性モデルを構築する礎となる. 28年度も概ね予定通り研究を進める.まず,複合空気流による感性評価を行う.最終的には構築した空気覚に関する知見を応用して,エンターテイメントや医療・福祉に活用する方法を考案する.
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Causes of Carryover |
繰越金の発生の理由を以下に列挙する. まず一つ目は,空気流発生装置のうち,低周波数を発生させるシステムの試作は,ものつくり大学の卒業研究費から負担したためである.つぎに,当初の予定では空気流の評価を行う手段として,3次元超音波式風速計を計上していたが,予算の削減により購入できなかったため,それよりも安価な温度変化式の風量計および高音圧が録音可能なマイクの購入に変更したことも挙げられる.また,予定していた評価実験は予備実験段階であったため謝金が発生していない.更に旅費に関しては,ミーティングや,学会発表などに必要な経費は自身の研究費から充てた場合があったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度以降の仕様計画に関して以下に列挙する. まずは複合空気流発生装置の費用に充てる.これは共同研究者が所属する3か所にあるべきでありシステムを増産する.さらにその改善を行うための部品代とする.改善には評価が必要であり,風量系のセンサを増量することも検討している.また評価実験も始まっているため,多数の被験者への謝礼や,評価実験に用いる消耗品への費用が発生する.更に,27年度は学会発表,査読付き論文の発表を検討しているため,旅費の支出も増える.
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