2014 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝・分子情報通信のある非平衡動的な人工細胞システムの創成
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26540150
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (20511249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人工細胞モデル / マイクロ・ナノデバイス / 非平衡 / 非線形 / マイクロフルイディクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,エネルギー代謝・分子情報通信のある非平衡動的な人工細胞システムを構築するための基礎技術,特に,マイクロ流体デバイスの開発を中心に研究を行った.エネルギー代謝や分子情報通信は,人工細胞内外や人工細胞間の分子のやり取りによって実現されるため,人工細胞に分子を流入させる技術,人工細胞から分子を取り除く技術が必要になる.本研究では,マイクロ流体デバイスにより,油中水滴型マイクロリアクタを作製して人工細胞とし,それに分子を運び込んだり取り除いたりするキャリアとなるマイクロ油中水滴を周期的に融合分裂させることで分子の流入および流出を実現した.このメカニズムがpulse-density modulation(PDM)によって定式化されることを考案し,それによって非線形化学振動反応の制御に成功した. 次に,エネルギー代謝反応の一種である,解糖振動反応に研究を展開した.解糖振動反応は,糖を基質として進む反応で,エネルギー物質であるNADHやATPの濃度の振動が見られることで知られている.本研究では,酵母細胞(Saccharomyces cerevisiae)の細胞抽出液を作製し,その反応液での振動の制御を目指して研究を進めた.その結果,従来知られているようにバルク系での振動反応が観察でき,さらに,油中水滴型マイクロリアクタ内での振動も観察できた.次のステップとして,マイクロ流路による基質・生成物の流入出条件下での振動制御を進めている. また,分子情報通信のできる人工細胞構築のため,まず数理モデルを用い,上記の油中水滴型マイクロリアクタ間での分子情報通信によって論理演算(AND,OR,NOT,NAND,etc.)ができることを示した.またこの演算を実現できるマイクロ流体デバイスの開発も進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 研究実施計画にある通り,水滴の融合分裂を基にした非平衡開放系型の人工細胞の制御により,非線形化学振動反応の制御に成功した.また,当初の計画にある通り,代謝に関係する解糖振動反応の制御にも道筋ができつつある.さらに,来年度の計画に含まれている,分子情報通信による論理演算の提唱やそのためのマイクロ流体デバイスの設計などもできてきている.このように,当初の計画にあるもの以上の進展が見られていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である来年度は,代謝反応の制御を行うとともに,分子的な情報処理の実現,および,分子情報処理可能な人工細胞の相互作用ネットワークによって高次の情報処理など,集団的現象の創発を目指す.とくに,生体分子による分子情報処理回路の制御や,フィードバック型の回路などをターゲットにし,汎用性のあるシステムの構築を目指す.数理モデルを用いた,原理の提唱を行うとともに,実際にマイクロ流体デバイスを用いて,実証していく.また,このシステムが,生きたバクテリアの密度制御へ応用できることを見いだしたので,この密度制御を通して,代謝や遺伝子回路を含む生きたバクテリアの細胞制御も同時に進めて行く.
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Causes of Carryover |
研究が順調に進み,実験回数が当初予定よりも少なく済み,消耗品の試薬の費用が安く済んだため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究が順調に進んだため,当初計画をさらに発展させた研究を行うことを想定しており,そのための実験消耗品類の購入に充てる.
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Research Products
(24 results)