2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26540151
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小宮 健 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20396790)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNAコンピュータ / DNAナノテクノロジー / 核酸増幅法 / 分子状態機械 / 早期診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、検査サンプルと混合して37℃の等温条件下に置くだけで、分子がmiRNAの転写パターン情報を処理して癌の種別や進行度、予後予測などを正確に診断できる、情報処理能力を持った知的反応システムを構築する。この反応システムは、申請者がこれまでに開発した核酸増幅法と分子状態機械で構成される。miRNAの存在量をシグナルDNAの生成によって評価するための、miRNAを逆転写せずに直接増幅して検出ができる核酸増幅法については、前年度にターゲット非存在下での非特異的な増幅反応の抑制に成功し、検出の感度を向上させた成果を受けて、今年度はさらに配列特異性の向上と検出が可能な核酸形態の多様性を拡張する研究に取り組んだ。その結果、これまでと同等以上の検出感度を維持したまま1塩基レベルの配列特異性を達成するとともに、miRNA以外の核酸検出の実現可能性を実証した。 また、核酸増幅法で生成されるシグナルDNAの生成順を分子状態機械が判別する反応システムを構築するため、分子状態機械の動作効率が向上する設計や反応条件の検討を行った。動作効率に影響を与える因子を特定したが、具体的な設計の改善や反応条件の最適化は、現在継続して実施しているところである。次年度中に分子状態機械の設計および反応条件の最適化を達成し、癌のプロファイリングに有用なmiRNAを対象とした一連の動作を実現して、従来手法よりも高感度な検査を簡易な操作で実施できる迅速かつ低コストな検査法を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床現場で求められるmiRNA検出感度を達成するため、核酸増幅法の性能向上に重点的に取り組むなかで、これまでに、他の多くの増幅法でも大きな問題となっているターゲット非存在下での非特異的な増幅反応を抑制することに成功した。その結果、検出感度が大きく向上し、血清中のmiRNA検出において求められる感度を実現する見込みが得られた。また、高精度かつ多様な診断を可能にするためには、検出の配列識別能の向上が求められるが、今年度に配列特異性を高める手法を考案し、1塩基レベルの配列の差を識別して高感度に検出することに成功した。さらに、同手法を適用することで、miRNA以外の形態を持つ核酸を検出できることも実証し、本研究課題で当初計画していたよりも高精度かつ汎用性の高い診断を実現できる可能性を示した。 しかし、これまでに確立してきた検出性能を向上させる手法は、修飾された核酸などを用いることで高い効果を発揮するものである。そのため実験に使用するDNA分子の合成に長い期間を要し、設計・合成・実験・検証の研究サイクルにかかる時間が当初の想定より増大した。また、最終的に構築する知的反応システムは核酸増幅法と分子状態機械を統合して動作させるものであるが、分子状態機械の動作について検証したところ期待する効率には達しておらず、設計の改善や反応条件の最適化を次年度も継続して実施する必要がある。最終的には当初計画よりも高性能な、分子が癌を診断する知的反応システムの創製が実現できる見込みであり、研究期間を延長して着実に目標を達成する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、分子状態機械がプロファイリングを行うためのシグナルとなるDNAを、核酸増幅法によりmiRNAに応じて一定量にまで指数増幅することで、miRNAの転写パターン情報を分子反応が処理し、途中で人間が操作することなくプロファイリングが完了する早期診断用の知的反応システムを実現することを目標としている。本年度は核酸増幅法の性能向上と分子状態機械の反応効率の向上に取り組んだ。その結果、検出感度性能を保ったまま1塩基レベルの配列特異性を達成するとともに、miRNA以外の形態を持った核酸についても本法を適用した検出と診断が行える可能性を示すことができた。今後は、分子状態機械の動作効率を向上させるために、設計の改善や反応条件の最適化を実施していくが、複数の考慮すべき因子を調整して改善をはかるには、実験に加えてシミュレーションによる解析を並行して実施することが有効と思われる。要素反応過程に関する実験データを取得して反応モデルを構築し、実験とシミュレーションを併用して最終目標である知的反応システムの創製を実現する。
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Causes of Carryover |
分子が癌を診断する知的反応システムの創製に向けて、今年度は分子状態機械の反応効率の向上と核酸増幅法の性能向上に取り組んだ。その結果、適切な挿入配列と核酸修飾の導入がそれぞれ有効であることを明らかにしたが、実験に使用するDNA分子の合成に長い期間を要し、設計・合成・実験・検証の研究サイクルにかかる時間が当初の想定より増大したため、研究期間を延長して実施する計画に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分子状態機械の動作効率を向上させるために、シミュレーションを併用して設計の改善や反応条件の最適化を実施する上で必要な、要素反応過程に関するデータを取得する実験のための消耗品、および今年度に継続して実施する核酸増幅法の検証実験のための消耗品と、成果の発信にかかる経費に主に使用する。
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