2015 Fiscal Year Research-status Report
オープンデータへの高効率アクセス基盤実現と高速エージェントシミュレーションの結合
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26540162
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
福田 直樹 静岡大学, 情報学部, 准教授 (30345805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オープンデータ / セマンティックウェブ / マルチエージェントシミュレーション / メカニズムデザイン / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
LOD(Linked Open Data)のデータモデルを定義するオントロジーにおいて推論のような高度な処理が可能となる場合に,それらのLODに対して効果的でかつ現実的な時間での問い合わせ実行を可能とする技術の開発をさらに進めるとともに,エージェントシミュレーション時に複雑な資源配分メカニズムの適用が可能となるように,オークションに基づく資源配分メカニズムに対する外部からの割り当て調整との整合性を取る機構およびアルゴリズムの設計に取り組んだ. 本年度では特に,同技術の洗練と適用範囲を拡張するためのソフトウェア基盤の開発を進めた.具体的には,推論付きLODエンドポイントを対象とした LODデータへのアクセスのフロントエンド向けの処理最適化・近似技術のさらなる拡張を行うと同時にその性能評価をまとめ,LODデータソースの探索効率化アルゴリズムをBLMAB(Budget-Limited Multi-Armed Bandit)モデルの拡張により実現する機構の開発を進めるとともに,LODクエリ作成・実行支援機構として活用できるようにした. これらの研究と並行して,もう1つの研究課題である,主に公共データなどを扱うLODからの情報抽出結果を踏まえて,高速にエージェントシミュレーションを行い,特定の公共政策などの影響の可能性や,必要な公共政策・メカニズムの自動計算・最適化を行えるようにするためのソフトウェア基盤・最適化技術の開発を進めた.シミュレーションそのものの高速化のために,マルチコア計算資源を核として,汎用性の高い実行パラメータ最適化機構に適用できるように,メカニズムの側の計算アルゴリズムの拡張およびその試作を行い,初期性能の評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では,持つ基本概念(オントロジー)の多様性を考慮しながら,それらのデータ源を効率的に探索しその差異を吸収・補間すると同時に高度な推論を用いたより広く正確なデータの検索を実現する機構として必要な,応用アルゴリズム・手法の開発とその性能評価を進めることができた. 本研究で試作を進めた内容が,本研究の背景である,政策提言などに向けたマルチエージェントシミュレーションやメカニズムデザインにおける知見の活用に向けて,その検証における実世界に近づけた条件設定をいかに適切に取り込み実行していくことができるかという1つの重要な課題の解決に向けた端点として,有益な役割を果たすことが期待できるような成果につながると期待される. 本研究のねらいは,より高い視野から述べるなら,政策提言を行うための根拠となるような公共データに対するデータ処理やそれに基づくシミュレーションの条件設定の過程などすべてをオープンに表現・記述・実行できるようにすることで,そうした政策提言に対する透明性や特定の利害関係からの独立性を証明しやすい状況を作り,それをもって失われた専門家への信頼を取り戻そうという専門家たちの行動を少しでも支えられるような技術的な基盤を実現することである. この課題を解決する鍵の1つが,近年政策的に多くの国で進められてきているLOD・オープンデータ化であり,その課題の解決に向けた取り組みは前出のとおりである. もう1つの鍵となる,シミュレーションそのものの高精度化と高速化の両立に向けた取り組みにでは,特に複雑なメカニズムのシミュレーションへの適用可能性を高めるためのアルゴリズムおよびメカニズム面での検討については,ほぼ計画通り進めることができたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現状においても,実データなどを参照してエージェントシミュレーションにより現実を模擬したり,あるいはエージェントシミュレーションにより特定の公共政策の効果を緻密に計算したりする研究は試みられており,そこに従来は適用が困難と思われた高度なメカニズムの適用の試みも少しずつ進みつつある.それらのシミュレーションの最適な条件設定パラメータを導出するためには,非常に広範囲にわたるシミュレーションの試行が必要となり,仮にそのシミュレーション内部でオークションのようなメカニズムを使うとしても,組合せオークションのような複雑なメカニズムの場合には厳密な実行には非常に小規模な範囲でのみ適用可能であるなどの課題があったが,これらの解決についても,一定の目処がつきつつある.これらを解決するための手がかりとして,本研究では単数・複数ユニット組合せオークションの高速近似手法に関するコア技術の拡張も進めてきているが,それをエージェントシミュレーションの高速化技術と組み合わせた際のさらなる高速実行化,特にGPUコンピューティングやXeon Phi等の超マルチコアプロセッサの利用を容易にするための基盤の実現のための核となる技術の適用範囲を広げるための基盤技術との連携部分の実装が,最終年度となる次年度における1つの課題となる.また,それらのシミュレーション中に人間とのインタラクションを組み入れる方法や,そのための誘因付けを実現するためのゲーミフィケーション等の知見の導入も,今後の本研究の発展可能性を確保する上での重要な課題の1つとなってくる. これらの課題の検討に向けて,目的に対応した高実行効率なエージェントシミュレーションと高度なメカニズムを平易に組み合わせて実行し,それらに対して人が能動的に介入することを許容できるようにすることで,そのメカニズムの理解へも役立つような基盤プラットフォーム技術の実現につなげたい.
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