2014 Fiscal Year Research-status Report
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26550001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20421951)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カービング氷河 / サイドスキャンソナー / 湖 / 海洋探査 / 環境変動 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、カービング氷河末端での観測に使用するサイドスキャンソナーの選定と調達、パタゴニアとグリーンランドのカービング氷河で試験的な運用を実施した。 1. サイドスキャンソナーの導入:カービング氷河末端形状を測定するために、扇状の音波を使って水中地形をセンシングするサイドスキャンソナーを導入した。観測機器会社との情報交換を通じて機器を選定し、調達にあたっては国内代理店の研究所を訪問して海洋での試験測定を実施した。 2. カービング氷河での観測:2014年8月にグリーンランド北西部にて、サイドスキャンソナーによる観測を実施した。まず海洋に流入するボードイン氷河では、氷河から崩れた氷山の影響で十分にカービング端に近づくことができず、また200mを超える深い海底からの反射が十分でないため、当初予定した測定が難しいことが判明した。そこで、過去に氷河が流入していたと考えられる比較的浅い海洋で測定を行ったところ、海底に形成された氷河地形の二次元情報を取得することができた。さらに2014年10月に南パタゴニア氷原ペリート・モレノ氷河にて、氷河前の湖で同様の観測を実施した。その結果、海底の地形構造の一部を測定することに成功した。 上記の試験的な観測を通じて、導入したサイドスキャンソナーの測定能力、カービング氷河前での測器の取り回し、データの取得等に関するノウハウを習得した。その結果、精密な測定を行うためには、対象物との距離を十分短くすることが重要であり、当初予定したよりも氷河に近づいて観測を行う必要性が示された。従って、当初予定のペリート・モレノ氷河に加えて、より規模の小さなカービング氷河での観測も視野に入れて研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は当初の計画に沿って、サイドスキャンソナーの導入を行い、カービング氷河の前縁で試験的な観測をおこなった。予定していたパタゴニア、ペリートモレノ氷河での観測に加えて、グリーンランドでもソナーを使った観測を行い、装置の特性や運用方法に関して重要な知見を得ることができた。ソナーによって得られる二次元情報は、カービング氷河前の詳細な地形を把握する上で優れており、カービング端の融解量を測定するために必要な能力を持っている。小型船を使った氷河前縁湖・海洋での観測も十分可能であり、湖・海洋いずれに流れ込むカービング氷河でも観測が望める その一方で予想よりも測定レンジが短いことが判明し、研究目的を達成するためには、当初の予定よりもカービングフロントにより近づく必要があることが明らかになった。カービングフロントの近辺で十分な安全を見込んで作業するためには、水中に浸かったカービング端を測定するための測定方法を入念に検討する必要がある。 上に述べた初年度の活動によって、計画以上の試験観測が実施できたものの、当初の予定よりも観測が容易でないことが明らかになった。以上の状況を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、カービング端の融解測定に必要な測定系を構築し、氷河前の湖・海洋でサイドスキャンソナー観測を実施する。得られたデータの解析によって、カービング端における水中融解量の推定を行う。 1. カービング端測定系の構築:前年度の観測から、カービング氷河末端部での観測についてある程度の経験と知識を得た。この知見に基づいて、カービング端の水中融解を測定するためのシステムを構築する。当初の計画にあるいくつかのアイデアを再検討し、①水中でサイドスキャンソナーを安定させ、②船上ではGPSを使ってソナーの位置を正確に測定し、③非常時には素早くその場を離れることができる測定系を準備する。 2. グリーンランド北西部でのカービング氷河観測:前年に観測を行ったボードイン氷河に加えて、より規模の小さなサン氷河での観測を計画する。この氷河はカービング端付近の水深が浅いため測定が比較的容易であり、カービングの頻度や氷山の数も少ないため氷河末端部への接近が可能である。観測には現地の協力者大島トク氏に、小型船の提供と操船を依頼する。 3. パタゴニアでのカービング氷河観測:当初予定していたペリートモレノ氷河に加えて、チリ側のグレイ氷河での観測を検討する。チリ側の研究者が本観測に興味を示しており、現地で共同観測を実施できる見込みがある。共同研究者と連絡をとって最善の観測地を選定する。
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Causes of Carryover |
当初予定した少額の消耗品を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する少額消耗品の購入を予定。
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