2014 Fiscal Year Research-status Report
POPs吸着材としての海鳥用足環の開発と海洋モニタリングへの適用
Project/Area Number |
26550005
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山下 麗 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (60599629)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 残留性有機汚染物質 / 海鳥 / バイオロギング |
Outline of Annual Research Achievements |
地球規模での海洋中の残留性有機汚染物質(POPs)のモニタリングは海洋生態系の保全の観点から重要な課題である。しかし、従来の海水中のPOPs汚染の調査方法は費用や時間がかかることから特に外洋における調査は限られている。本研究は、POPs吸着力の高いプラスチック製の足環と位置情報や着水時間を計測する機器(ジオロケーターやGPS)を異なる行動範囲を持つ海鳥に装着することで、簡便に地球規模での海水中のPOPsモニタリングを行うことを目的としている。本年度はプラスチック製足環の耐久性と吸着性の検討と、実際に足環とGPSを海鳥に装着・回収しPOPsの分析とモニタリング海域の推定を行った。プラスチックの素材は短時間に吸着すると予想される薄いポリエチンレンと長時間で吸着する厚めのポリエチンレンの2種を用意した。厚めのポリエチレンは足環状にするための加工に適さないため、他の素材にする必要がある。薄手のポリエチレンは耐久性が不明なため、実際にGPSを付けた海鳥に装着してみた。その結果、装着期間が3週間程度でも耐久性に問題はなく、PCBs、DDTs、HCHsが検出された。海鳥の移動速度から着水時間を解析した結果、27個体の海鳥の着水時間は約80から340時間であった。この着水時間と足環のPOPs濃度との関係を検討したが、明確な関係は認められなかった。着水時間だけでなく個体毎の行動海域の違いもPOPs濃度に反映されている可能性があることから、今後行動海域について詳しく解析する。また、既知のPOPs濃度の水溶液を用いて2種類の足環の浸漬実験を開始した。これは1年間継続する予定であり、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた北海道天売島に生息するウトウを用いてプラスチック製足環の装着を行ったが、海況が悪く回収率が0%であった。そこで調査地と対照種を変更して対応したが、このようなアクシデントは野外生物を対象とする場合は起こり得るので、対象種や調査地を予定より多く設定しておく必要性を感じた。初年度に予定していた実験は概ね遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
耐久性および吸着力の向上のためにさらに足環の素材の検討を行う予定である。室内における足環の浸漬実験を継続しており、その分析を行う。今後は対象種を拡げるとともに、海鳥の行動海域の解析を進め、足環の濃度との関係について明らかにする。
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