2014 Fiscal Year Research-status Report
メダカを利用した耳石微量試料の酸素同位体比による回遊履歴解読手法の開発
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26550009
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山口 啓子 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (80322220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 三郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 研究員 (90359175)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸素安定同位体比 / 耳石 / 環境履歴 / 塩分 / ミナミメダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度はミナミメダカOryzias latipesについて、①塩分を変化させた飼育実験と②淡水から汽水まで野外での分布調査と個体の季節を通じた採集を行い、それぞれについて耳石を取り出して、サイズの計測および酸素炭素同位体比を測定した。 ①ではろ過海水と地下水を混合して0/5/10/15/20/25/30の各塩分に調整した飼育水を作製し、水温20℃および25℃となるように温度管理した人工気象室(12時間昼夜反転)で水槽を維持した。淡水で飼育した親魚から採卵し孵化させたメダカ稚魚をそれらに投入し、飼育した。体長20mmまで成長させることを目標に飼育を行ったが、3-4ヶ月の飼育で死亡個体が多くなったため、体長15mm程度で飼育を終了し、耳石を取り出した。得られた耳石の酸素安定同位体比を測定したところ、20℃・25℃ともに塩分と同位体値が直線関係となり、耳石の酸素同位体比が塩分を反映することが示された。ただし、直線の傾きが温度によって異なった。また、体長13mm程度の個体の耳石は非常に小さかったため、試料量が不足し、同位体分析で正しい値が得られないことが課題となった。 ②の野外調査では、淡水から1/2塩分程度の汽水(中海)まで、野生のメダカ個体群を確認し、6定点を設置し毎月試料を採取した。各地点で夏期に採取した耳石試料について同位体値を測定したところ、酸素同位体比の値が淡水と汽水とで異なり、その値は①の実験結果と同程度であった。しかし、一部の地点では、値が①の結果から外れていた。また、炭素については、環境塩分とは直線関係にならなかった。これは、餌の影響が大きいためと見られる。 ①②の結果から、メダカの耳石の酸素同位体比は生息塩分を反映して変化し、生息環境履歴の推定に利用可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育実験や同位体分析では、飼育条件のトラブルによるデータの欠測、機械の故障による同位体比の分析試料数やレーザー分析装置分析の遅れ(H26年度中に実用段階まで完成せず)があるが、飼育実験に関する方法や耳石試料の集積、野外調査による試料収集については順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
メダカの耳石の酸素同位体比の値と塩分の直線関係は確認できたが、酸素安定同位体比は炭酸塩が形成される時の水温によっても変化することが知られている。H26年度には水温による影響をみるために20℃と25℃で飼育を行ったが、その結果、直線の傾きやゼロ切片が温度によって異なった。また、水の塩分から推定した値よりもやや低めであった。それらの理由について明らかにする必要がある。そのため、H27年度も飼育実験を行い、成育水温条件や大気からの酸素の取り込みなどの影響を更に検討する。野外調査についても、水温の影響を検討する。また、成長にそった環境履歴の推定方法としても、検討するため、レーザー分析装置で微量試料の測定ができなかった場合を想定して、耳石断面の成長に沿ってSr/Ca比の変化についても測定する。また、生息場所(塩分)が変化した場合にどのような耳石が形成されるのかを、飼育実験により明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画では、研究代表者および研究協力者の島根大学大学院生が、共同研究者の坂井氏の所属する海洋研究開発機構を訪問し、同所の分析機器にて同位体の測定を行い、また、坂井氏が代表者を訪れ、研究打ち合わせを行う予定であったが、何れも日程の調整が付かず(予定を組んだが機械が故障したり、急な用件発生など諸般の事情で)キャンセルとなり、予定した旅費が使われなかった。そのためh26年度内では、最小限の試料だけを送付して、分析を坂井氏に依頼することになったため、分析関連の消耗品の使用量も想定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
採取済みの残りの試料については、年度をまたいで再度日程調整を行い、代表者と院生とで分析を行うこととした。5月に研究代表者と院生が海洋研究開発機構に追加の試料を持って行き、同位体比の分析とH27年度の研究打ち合わせを行う予定である。その際に、昨年度予定した旅費と消耗品を使用する。
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