2014 Fiscal Year Research-status Report
海洋亜表層の窒素循環を制御する微量金属元素の複合作用メカニズム
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26550010
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武田 重信 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20334328)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 物質循環 / 微量金属 / 窒素 / 植物プランクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年6~8月に実施された白鳳丸KH-14-3次航海に乗船し、北太平洋の北緯35度・西経170度の亜寒帯・亜熱帯移行域において集中観測を実施した。亜表層クロロフィル極大層は深度52m付近に認められ、その直下の深度56m付近に亜硝酸塩極大層が形成されていた。クリーン採水システムを用いて深度200mから20mにかけて数m間隔で24層の採水を行うことにより、鉄、銅、亜鉛などの微量金属の詳細な鉛直分布の状況と亜硝酸塩極大層の植物プランクトンおよび栄養塩の分布構造との関係を解析するための海水試料を得ることができた。現在、自動濃縮装置付き高分解能ICP質量分析計を用いて、溶存微量金属濃度の測定を進めている。 上記の観測点および北緯50度・西経170度の亜寒帯域(高栄養塩・低クロロフィル海域)の2測点において、表層10mおよび亜表層クロロフィル極大層付近の植物プランクトン群集を含む現場海水に、1 nmol/Lの鉄あるいは亜鉛、もしくは0.1 nmol/Lのコバルトを添加して現場の水温・光量を模擬した環境下で3~5日間の船上培養実験を実施した。その結果、植物プランクトン群集が増殖応答を示したのは鉄添加区のみであり、亜鉛やコバルトの添加に対する明瞭な応答は確認できなかった。これらの微量金属の添加が、培養実験系内の亜硝酸塩濃度にどのような影響を及ぼしていたのかについて、現場の微量金属の鉛直分布の状況と照らし合わせながら、さらに検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白鳳丸KH-14-3次航海(6~8月)に参加して、北太平洋亜寒帯・亜熱帯移行域における集中観測・採水と、2測点での船上培養実験を予定通り実施することができた。培養実験においては、鉄に対してのみ植物プランクトンの応答が確認されたが、今後、採取した試料の分析を進めることにより、他の微量金属の影響についても理解が進むものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年7~10月に予定されている長崎丸、新青丸、白鳳丸等の航海を利用し、陸由来の微量金属供給の影響を受け易い黒潮域の島嶼周辺海域と、水柱の微量金属濃度が低いフィリピン海などを対比させながら、昨年度と同様の定点観測を行う。これら2ヵ年の現場観測で得られた結果を統合的に解析し、各種微量金属の不足が亜硝酸塩極大層の形成を始めとする海洋亜表層での窒素循環に及ぼす影響を評価する。
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