2014 Fiscal Year Research-status Report
異なる植生下の地下水涵養システムと鍾乳石形成の鍾乳洞内での “その場観測”
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26550011
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 博貴 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80274687)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鍾乳石 / 炭素・酸素同位体比 / 地下水涵養 / 植生変遷 / 炭酸塩続成作用 / 南大東島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,炭酸塩岩からなる亜熱帯島嶼域の異なる地表植生下での地下水涵養システムと気候変動に伴う鍾乳石形成過程の相違を明らかにするために,沖縄県南大東島の鍾乳洞を対象として, 1)地表植生の異なる鍾乳洞内での気象観測機器による地下水涵養量と洞内環境変化の連続観測と鍾乳石・滴下水・二酸化炭素試料の採取,と2)鍾乳石・滴下水・二酸化炭素試料の成長速度測定と化学組成・安定同位体比等の各種分析により,地表植生の違いによる降水の地下水涵養システム・涵養量の検討と鍾乳石の形成過程と鍾乳石に記録された気候変動記録の解析を目的としている.平成26年度には,沖縄県南大東島中央低地北東部の標高20m付近に開口する山下洞(森林植生下)・今村洞(甘蔗園下)を対象として,洞内への気象観測機器類の設置・観測,各種試料採取,ならびに洞外の土壌二酸化炭素調査を実施した. 鍾乳洞現地調査では,第1回調査で山下洞内の地図(今村洞は作成済)を作成し,山下洞・今村洞両洞内に雨量計・温度ロガーを設置し連続観測を開始した.その後,夏季・秋季・冬季に現地調査を行い,データの回収を実施すると共に,機器設置地点の二酸化炭素濃度測定と同位体分析用二酸化炭素試料を採取した.また機器設置地点近傍より鍾乳石を,雨量計設置地点と鍾乳石採取地点において滴下水の水質化学的性質の違いとその季節変化を明らかにするために,現地調査ごとに滴下水を採取した.さらに洞内機器設置点の直上に位置する地点からは,土壌二酸化炭素濃度と二酸化炭素を採取した. 採取した鍾乳石試料の一部は,年縞による成長速度の測定と炭素・酸素安定同位体比測定ならびに化学組成分析を実施した.また滴下水分析用機器についても新たに導入し,滴下水分析を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,計画していた洞内環境変化の連続観測のための機器設置(山下洞・今村洞あわせて6地点)ならびに連続観測を順調に開始することができ,現在も洞内において連続測定を継続中である.これは当初予定していた地点より多くの地点であり,これにより同一植生下における地点間の違いよる環境変化についても,より詳細に検討することが可能となった.また研究用試・資料に関しても,異なる地表植生条件における季節ごとの二酸化炭素試料(洞内・洞外)・滴下水試料(洞内)・鍾乳石試料(全6試料)等の採取が予定通りに遂行でき,概ね順調に研究は進展しているものと判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,平成26年度に引き続き,南大東島山下洞・今村洞にて,気象機器による連続観測の継続(滴下水量・温度),四季に応じた現地観測(二酸化炭素濃度)・試料採取(滴下水)を実施する(春季・夏季・秋季・冬季の4回を予定).また採取試料については,平成26年度分とあわせ,滴下水については,地表植生による水質化学的性質の違いと同一植生条件下での季節による水質変動を明らかにするために,水素・酸素同位体比測定(質量分析;熊本大にて実施),アルカリ度測定(滴定分析;熊本大にて実施),溶存イオン分析(イオンクロマト分析;熊本大にて実施)を行う.さらに二酸化炭素試料については,地表植生による炭素安定同位体比の違いと同一植生条件下での季節変動を明らかにするために,溶存無機炭素の炭素同位体比測定(質量分析;福岡大にて実施)を実施する.さらに当初計画にはないが,地表と鍾乳洞間における滴下水の変化を知るために,土壌と洞内の岩石採取と現地調査時に実施し,既存分析装置を活用して分析を実施する.
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