2016 Fiscal Year Research-status Report
熱帯樹木はなぜ塩化メチルを大量に放出するのか:水利用特性との関係解明
Project/Area Number |
26550017
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
斉藤 拓也 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (40414370)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 塩化メチル / フタバガキ / 熱帯林 / 成層圏オゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
大気中で最も存在量の多いハロカーボンである塩化メチルは、活性な塩素原子を地表から成層圏へと輸送する自然起源のキャリアーとして働き、成層圏オゾン破壊全体の約15%に寄与している。大気への塩化メチルの供給源には海洋やバイオマス燃焼など様々なものがあるが、中でも熱帯植物は最大の塩化メチル発生源と考えられている。これまでの研究により、熱帯植物による塩化メチル放出量には気温や日射量などの環境要因よりも植物種による違いが大きく、一部の種のみが大量に塩化メチルを放出していること、科や属のレベルで放出量に類似性が見られることなどがわかってきた。しかし、なぜ一部の種のみが放出し、その他の種はほとんど放出しないのかといった、放出量の種間差を規定する要因は明らかにされていない。そこで本研究では、塩化メチルの生合成の基質である塩化物イオンに着目し、植物葉に含まれる塩化物イオンの濃度と葉群からの塩化メチル放出量の関係を調べた。 その結果、葉群からの塩化メチル放出量はShorea beccarianaで最も高く、Dryobalanops aromaticaがそれに続いた。いずれもフタバガキ科の高木でランビルの主要樹種である。放出量の測定は約15種の熱帯樹木について行ったが、フタバガキ科以外の樹木からは塩化メチルの放出はほとんど認められなかった。樹木葉中の塩化物イオン濃度(葉の乾燥重量当たり)には、塩化メチル放出量との間に有意な相関は見られなかった。一方、葉に含まれる水分を考慮し、塩化物イオン濃度を葉内水分当たりで求めたところ、塩化メチル放出量との間に相関が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
樹液の採取法及び樹液中塩化物イオンの測定法の確立に時間がかかり、予定していたサンプルの分析を実施できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き塩化メチル放出量の観測を行うと共に、葉及び樹液中塩化物イオン濃度の測定を行う。
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Causes of Carryover |
樹液の採取法と樹液中塩化物イオン濃度の測定法の確立に時間を要し、予定していたサンプルの分析を実施できていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
植物葉群による放出ガスと葉及び樹液試料の採取のためのマレーシア現地調査旅費と試料の分析のために使用する。
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