2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26550027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 智裕 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80212223)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 有糸分裂期 / 放射線感受性 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
有糸分裂期は最も放射線に対する感受性が高い細胞周期ステージであるにもかかわらず、この時期の放射線応答研究は未着手であった。有糸分裂期の細胞が放射線に対する感受性が高い理由として、①凝縮した染色体が修復タンパク質の損傷部位へのアクセスを妨げる、あるいは、②染色体運動のため、二重鎖切断部位が互いに離れてしまい、修復不能であるといった理由が考えられる。また、③有糸分裂期には、DNA損傷チェックポイントが機能しないとも考えられている。これらの予想は互いに排他的ではなく、有糸分裂期の高い放射線感受性は、これらの要因の総和の結果かもしれない。 本研究では、前年度に引き続き、分裂酵母のモデル系を用い、特にテロメア近傍に存在するDNA損傷修復遺伝子を含むストレス応答遺伝子群の発現メカニズムの解析を行った。26年度に同定したBdc1タンパク質は、このテロメア近傍の遺伝子発現の制御因子である。このタンパク質の欠損により、通常は抑制(遺伝子サイレンシング)されるストレス応答遺伝子群が発現する。27年度は、この遺伝子サイレンシングに、クロマチンの凝縮が関与することを示唆する結果を得た。目下、このクロマチン凝縮に寄与する因子の同定を進めている。 有糸分裂期の細胞の放射線に対する高感受性の理由として、「凝縮した染色体が修復タンパク質の損傷部位へのアクセスを妨げる」ことが考えられてきたが、我々の結果は、「凝縮した染色体が損傷応答遺伝子の発現を抑制する」という新たな概念を提示するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テロメア近傍の遺伝子サイレンシングに、クロマチンの凝縮が関与するという新規性の高い結果を得た一方、その背後の分子メニズムの解明が完璧ではない。
|
Strategy for Future Research Activity |
クロマチンの凝縮に関与する因子について、その欠損が引き起こす影響について精力的に解析する。
|
Causes of Carryover |
本研究では、ヒト培養細胞と分裂酵母の実験系を用いる予定であった。しかしながら、開始当初に、ヒト培養細胞系における我々の疑問点が、他のグループにより解明・報告されたので、分裂酵母のモデル系における実験に専念した。このため、ヒト培養細胞を用いた実験に必要な経費が未使用となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
分裂酵母を用いた研究の推進のために技術補佐員を雇用する。また、実験に必要な試薬等を購入する。
|