2016 Fiscal Year Research-status Report
DNAポリメラーゼによる新規変異誘発機構に関する研究
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26550034
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
鹿園 直哉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 量子生命科学研究部, 部長(定常) (10354961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 突然変異 / クラスターDNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、DNA損傷が局所的に複数個存在する「クラスターDNA損傷」に対する変異誘発機構の解明を通じ、新たな変異誘発機構の手がかりを得ることを目的としている。近年クラスターDNA損傷の変異誘発機構には変異誘発性のDNA損傷があるDNA鎖がDNAポリメラーゼにより優先的に複製され、相補鎖は喪失する過程が関与するというモデルが提唱されている。このモデルを検証する一環として、これまで新たなプラスミド作製法を開発し、クラスターDNA損傷を有するプラスミドDNAの各々の鎖のどちらを複製に用いるかを調べた結果、少なくとも相補鎖の一部は喪失しないことを突き止めた。本年度は、相補鎖の喪失はクラスターDNA損傷からの距離に依存するのかどうかを調べる研究を進めた。 DNAの各々の鎖のどちらを複製の鋳型に用いたか調べるために、本研究課題で開発した手法により、クラスターDNA損傷とミスマッチを導入したプラスミドを作製した。ミスマッチはクラスターDNA損傷を構成する8-オキソグアニンから上流138bpと21bp、及び、下流22bpと246bpに配置した。その結果、上流138bpと下流246bpの位置ではどちらの鎖も同程度の割合で複製されていることが示唆されたが、上流21bpと下流22bpの位置ではDNAポリメラーゼは8-オキソグアニンがある鎖を優先的に複製することがわかった。この結果は、クラスターDNA損傷の変異誘発機構には、数十塩基対といった短い領域で、変異誘発性DNA損傷がある鎖を優先的に複製する機構が存在することを示唆する。さらに、PolIを欠損すると鋳型の優先性を示す領域が数百塩基対以上に拡大することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はクラスターDNA損傷を有するプラスミド分子を用いて、一方の鎖を優先的に複製するかどうか、さらに複製するとして、その機構に対する知見を得る予定であった。当初の計画はほぼ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本課題で開発した、クラスターDNA損傷及びミスマッチを含む環状プラスミドDNAを基質として用い、クラスターDNA損傷を含む分子の複製過程に対するさらなる知見を得る予定である。具体的には、変異過程に関わると想定される遺伝子の突然変異株を用いて複製時の分子機構を調べる。PolIが有する(1)エキソヌクレアーゼ活性(2)鎖置換活性(3)DNAポリメラーゼ活性等を欠損した突然変異株を作製し、DNA鎖の鋳型として使われる割合の変化、さらにはその範囲を調べることで、複製過程の詳細を明らかにする予定である。また、DNA組換え過程の関与も想定されることから、recA遺伝子の欠損突然変異株を用いて、変異誘発性DNA損傷がある鎖を優先的に複製する過程がどのような影響を受けるかを調べ、変異誘発機構の詳細に迫る。
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Causes of Carryover |
当初計画を効率的に進めた結果、物品費を節約できたため、未使用額が生じた。これにより、当初計画に追加して研究を実施し、補助事業の目的をより精緻に達成することを図る。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、追加する解析に係る物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)