2015 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀による特定ケモカイン分子種の脳選択的発現誘導
Project/Area Number |
26550037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永沼 章 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80155952)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有害化学物質 / 遺伝子 / 蛋白質 / 環境 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、37種同定されているマウスのケモカイン分子種の中でCCL3およびCCL4の発現がメチル水銀によって脳組織特異的に誘導されることを明らかにした。昨年度我々は、メチル水銀によるCCL4の発現誘導に関わるプロモーター領域をレポーターアッセイにより検索し(C17.2細胞)、転写開始点から上流50 bpまでの領域にメチル水銀によるCCL4の発現誘導に必要な領域が存在することも明らかにした。そこで本年度はまず、この50 bpに結合する可能性のある転写因子をデータベース検索したところ10個の転写因子が該当した。この10個の転写因子を1つずつsiRNAを用いてノックダウンさせたところ、SRFおよびFOXA1をそれぞれノックダウンさせることによってメチル水銀によるCCL4mRNAレベルの上昇が抑制されることが判明した。メチル水銀はFOXA1の細胞内レベルを減少させたが、核内レベルは逆に上昇させた。一方、SRFは細胞内レベルおよび核内レベルがメチル水銀によって共に上昇した。この結果は、メチル水銀が核内レベルを上昇させることによって両転写因子の転写活性を高めている可能性を示唆している。メチル水銀によるCCL4の発現誘導に必要な領域(50 bp)中に存在するFOXA1結合コンセンサス領域はSRFの同領域内に完全に含まれている。そこで50 bp中のSRF結合コンセンサス領域を含むオリゴDNAを用いて検討したところ、このオリゴDNAへの両転写因子の結合がメチル水銀によって共に増加することが確認された。本研究によって、メチル水銀がケモカイン分子種の中でCCL3およびCCL4の発現を脳特異的に誘導し、その発現誘導にSRFおよびFOXA1が転写因子として関与することが示された。本知見は、メチル水銀が脳に対して選択的に引き起こす障害のメカニズムを解明するための突破口となり得るものと思われる。
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