2014 Fiscal Year Research-status Report
セシウム137の多世代慢性的経口微量摂取による子孫マウスの心筋への影響
Project/Area Number |
26550039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中島 裕夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20237275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 崇 大阪大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90323336)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / セシウム137 / 内部被ばく影響 / 心筋 / チェルノブイリ原発事故 / 酸化ストレス / 透過電顕解析 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島、チェルノブイリ原発事故による放射能汚染は、高濃度汚染地域よりはるかに広範囲な低濃度汚染を引き起こした。このような環境下で暮らし続ける住人には、低線量内部被ばくによる人体への影響、特に継世代的影響が懸念される。しかし、ヒトでは世代交代の年月が長いために、これらの影響が判明するには数百年が必要である。そこで、福島、チェルノブイリ近郊と同じようなセシウム137(137Cs)汚染環境を実験室で再現し、その中で世代交代の速い近交系マウスを多世代交配し続けた子孫マウスでの発がん、突然変異、非発がん影響を調べるべく現在までに15 世代以上の世代交代に成功した。本研究は、近年ICRP などで緊急課題とされる低線量放射線もしくはCs の毒性による循環器系への影響が事実であるか挑戦的な実験による病理解明の検討を試みてヒトへの影響を推測することが目的である。 本研究の初年度である平成26年度では、あらたに4世代の世代交代をすすめることができ、実験開始から22 世代目までの交配に成功した。現在もそのまま同じ条件で兄妹交配を継続している(ヒトでの22世代はおおよそ400 年に相当する)。また、本年度は、実験目標である心臓、血管への影響を検討するために、137CsCl水溶液(100Bq/ml)を12 ヶ月自由摂取させた群と、137CsCl水溶液を2か月自由摂取させた後、対照群と同じ0Bq水を10か月自由摂取させた群(回復群)、そして対照群でそれぞれ3匹ずつのマウスを12か月間飼育した。現在、これらのマウスより剥出された血管と心臓を、2%グルタルアルデヒド固定と液体窒素による即時凍結保存を終了したところである。これにより、透過電顕による細胞構造解析とCE-TOFMS によるメタボローム解析用の試料を準備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セシウム137の多世代慢性的経口微量摂取による子孫マウスの心筋への影響を検討することが目的のため、セシウム137水を自由摂取させた世代数を極力多くしたマウスで、さらに、予定した3、6、12か月齢のマウスのうち、最もセシウム137の曝露時間が長く、影響を強く受けていると考えられる12か月齢マウスサンプルを先に得ることとしたために、平成26年度は殆どがサンプルを得るための飼育期間となった。そのために、当初予定していた、透過電顕解析、メタボローム解析の開始が若干遅れている。しかし、現在、予定した心筋、血管のサンプルをすべて得ることができ、透過電顕用のエポン切片作製を開始しているので、透過電顕解析を近く始められる状況にあり、平成27年度の予定に大きく影響しないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、固定サンプルを透過電顕解析により細胞構造、特に酸化ストレスの中心となるミトコンドリアの構造異常の有無について解析する。 また、心臓は、生理活動のために多くの酸素を必要とする臓器で、心筋細胞内のミトコンドリアでは、多くの酸素を電子伝達系により代謝しており、多くの過酸化物を生じている。そのために、ミトコンドリア自身に対して酸化ストレスが強くかかる状況にある。そこへ、筋肉親和性の高い放射性セシウムがK イオンと共に取り込まれてくると心筋では放射線による酸化ストレスを相加的に受けることになる。さらに、Cs は、放射性物質とは別に、K イオンチャンネルブロッカーとしても知られるもので、放射性セシウムの壊変によってできるバリウム はさらに強力なK イオンチャンネルブロッカーである。Cs はK イオンと同属のアルカリ金属であるので、生体内動態は、K イオンと同じような動態を示す。 心筋収縮には、K イオンが大きくかかわっているために、Cs のチャンネルブロッカーとしての毒性、そして、酸化ストレスによるミトコンドリアへの傷害が予想されるところである。そのために、電子伝達系の代謝がダウンすることで、酸素を必要としない、解糖系が亢進する可能性が考えられるので、この代謝系への影響を確認するために即時凍結心筋のCE-TOFMS によるメタボローム解析を行ってデータを得る予定である。そして、微細構造と代謝への影響を対照群と比較検討する。
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Research Products
(7 results)